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1 先天性肝線維症
congenital hepatic fibrosis
清水 雅仁
(岐阜大学大学院教授・消化器病態学)

▼定義

 胆管板の形成異常,肝内門脈枝の分枝異常,門脈域の進行性の線維化などに基づく門脈・胆管系の発生異常である.病理学的に小葉間胆管の線維性破壊,肝内胆管の拡張,つぶれた門脈などを認めるまれな先天性疾患である.

▼病態

 特に門脈域の線維増生によって前類洞性門脈圧亢進症をきたし,肝脾腫,脾機能亢進,汎血球減少,食道胃静脈瘤などが出現する.胆管炎を合併することが多い.多発性囊胞腎と関連する疾患と考えられ,先天性肝線維症の50%以上に腎疾患を合併する.肝内胆管の肉眼的な囊胞状拡張を伴う場合がある.本症の発症には遺伝的素因が深く関連しており,同胞内発生も多くみられる.

▼疫学

 先天性肝線維症の発症頻度はきわめて低い.本症を最も合併しやすい常染色体劣性多発性囊胞腎の頻度が,出生10,000~40,000人に1人であることを考えても明らかである.発症年齢は平均13歳であり,ほとんどが小児期に発症する.

▼症状

 臨床症状は肝硬変に類似するが,肝予備能は相対的に保たれているのが特徴である.偶然に発見される肝脾腫,原因不明の汎血球減少,食道胃静脈瘤の破裂による吐血など,門脈圧亢進に伴う症状を認めることが多い.発熱,腹痛,黄疸など,原因不明の胆管炎を繰り返すこともあるが,この場合の多くはCaroli(カロリ)病(先天性肝内胆管拡張症)を合併している.囊胞腎の精査や剖検を契機に,偶然診断されることもある.

▼診断

 確定診断は,肝生検による病理診断によって行う.門脈域の線維性拡大や胆管板の遺残を思わせる異常な形状の胆管増生を認めるが,肝実質の変性壊死や再生結節は認めない.血液検査所見では血小板低下や汎血球減少を認めるが,トランスアミナーゼやγ-GTPなどは正常ないし軽度高値を示すことが多い.消化管内視鏡検査所見では門脈圧亢進症に合致して,食道胃静脈瘤を認める.

▼治療

 胆管板の形成異常や肝線維化に対する根治

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