診療支援
治療

2 急性肝不全,遅発性肝不全
acute liver failure and late-onset hepatic failure
中山 伸朗
(埼玉医科大学准教授・消化器内科・肝臓内科)

疾患を疑うポイント

●慢性肝疾患のない症例に,発熱,黄疸などを初発症状として発症する.

●PT-INR 1.5以上ないしはPT 40%以下の高度の肝機能障害を呈する.

学びのポイント

●B型のウイルス性を成因とするものが多かったが,最近ではウイルス性が減少し,自己免疫性,薬物性,成因不明の比率が増加している.

●欧米で主要な原因である薬物中毒に起因する症例は,わが国では少ない.

●非昏睡型では成因にかかわらず多くが救命されるが,昏睡型は内科的治療の予後が不良である.

●肝移植による救命率は高いが,治療対象がおおよそ65歳までに限られ,ドナーが圧倒的に不足している.

▼定義

 正常肝ないし肝予備能が正常と考えられる肝に肝障害が生じ,初発症状出現から8週以内に,高度の肝機能障害に基づいてプロトロンビン時間が40%以下ないしはINR値1.5以上を示すものを「急性肝不全」と,わが国では診断する.2011年に厚生労働

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