疾患を疑うポイント
●原因不明の繰り返す腹痛.
●閉塞機転のない総胆管拡張.
●検診もしくはスクリーニングの腹部超音波で胆囊粘膜の過形成性変化.
学びのポイント
●先天性胆道拡張症は,膵・胆管合流異常と密接な関係にある.
●膵・胆管合流異常を合併することが多く,膵液胆道逆流現象により胆道癌の発生頻度が高率である.予防的に肝外胆管切除および胆囊摘出術が推奨される.
●胆囊癌もしくは胆管癌の症例では,膵・胆管合流異常の有無の検索をする.
▼定義
総胆管を含む肝外胆管が限局性に拡張する先天性の形成異常で,膵・胆管合流異常を合併するものと定義されている(ただし,肝内胆管の拡張を伴う例もある).従来欧米では,総胆管囊腫(congenital choledochal cyst)とよばれている.
本症は,膵・胆管合流異常と密な関係にあり胆道癌の発生リスクとなりうる病態であることが知られている.
▼病因
先天性胆道拡張症および膵・胆管合流異常の発生機序は,解明されていない.しかし,膵・胆管合流異常と密接な関係にあることから,胆管および膵臓の発生異常が大きく関与していることが推測される.膵・胆管合流異常では,胆管系と背側膵管は直接合流することはなく背側膵管は正常であることから,腹側膵原基と背側膵原基が癒合する以前の胎生早期の腹側膵と下部胆管の異常が大きく関与していると考えられる.
胆管拡張の原因に関しては,合流異常に伴う膵液胆管内逆流説や胆管壁の弾性線維の未熟性による胆管壁脆弱説,下部胆管の先天的狭窄によって胆道内圧が上昇し胆管拡張が起こるとする説や胎生早期の下部胆管の上皮増殖が不十分で上部胆管の上皮増殖が過剰に起こった結果(胆管の上皮増殖の不均衡),上部胆管が拡張する説などさまざまな要因が推測される.
▼疫学
胆道拡張症は,男女比が約1:3と女性に多く,アジア人に多い.
▼分類
以前は,拡張胆管の肉眼形態からⅠ