疾患を疑うポイント
●出生もしくは1か月健診時の肝腫大,黄疸,灰白色便,褐色尿.
●直接ビリルビン優位の黄疸.
●腹部超音波で緊満性が乏しく,波を打っているような胆囊.
学びのポイント
●1か月健診時に見逃さない.
●新生児肝炎との鑑別.
●生後60日以内に外科的手術(黄疸消失率は手術日齢と関連あり).
▼定義
新生児期から乳児期早期に発症し,難治性の胆汁うっ滞をきたす疾患である.炎症性に肝外胆管組織の破壊が起こり,さまざまなレベルでの肝外胆管閉塞を認める.
▼病因
先天的要素,遺伝的要素,感染などの種々の説が挙げられるが,いまだ解明されていない.肝外胆管を中心とした炎症性変化により破壊され閉塞する.
▼疫学
出生1/10,000~15,000例にみられ,女児に多い.
▼分類
胆管閉塞部位によりⅠ型(総胆管閉塞),Ⅱ型(肝管閉塞),Ⅲ型(肝門部閉塞)に分類される.全体の約85%がⅢ型で,10%程度はⅠ型である.Ⅰ型には,総胆管に囊胞を認めるⅠ-cyst型が含まれ,先天性胆道拡張症との鑑別が必要である.
▼臨床症状
新生児期から乳児期早期に症状が出現する.新生児黄疸が消失せずに,生後1か月を過ぎても遷延性の黄疸を認める.また,肝腫大や淡黄色便や灰白色便,褐色尿も認める.脂溶性ビタミンK吸収障害によりけいれんや頭蓋内出血をきたすこともある.その他,無脾・多脾症候群,腸回転異常症,十二指腸前門脈などの内臓奇形を伴うことが多い.
▼診断
➊生化学検査
新生児肝炎との鑑別が重要となる.胆道閉鎖症では,直接ビリルビン優位の血清ビリルビン上昇を認める.胆汁うっ滞を反映し,リポ蛋白Xが強陽性となる.
➋腹部超音波
簡便かつ非侵襲的であるため,最初に行われる.緊満性が乏しく壁が波打っているような胆囊を認めること(図5-31図a)やtriangular cord(図5-31図b)とよばれる門脈左右枝の腹側に高輝度帯(結合組