診療支援
治療

3 胆道閉鎖症
biliary atresia
原 精一
(東邦大学医療センター大森病院・消化器内科)
五十嵐 良典
(東邦大学医療センター大森病院・消化器内科教授)

疾患を疑うポイント

●出生もしくは1か月健診時の肝腫大,黄疸,灰白色便,褐色尿.

●直接ビリルビン優位の黄疸.

●腹部超音波で緊満性が乏しく,波を打っているような胆囊.

学びのポイント

●1か月健診時に見逃さない.

●新生児肝炎との鑑別.

●生後60日以内に外科的手術(黄疸消失率は手術日齢と関連あり).

▼定義

 新生児期から乳児期早期に発症し,難治性の胆汁うっ滞をきたす疾患である.炎症性に肝外胆管組織の破壊が起こり,さまざまなレベルでの肝外胆管閉塞を認める.

▼病因

 先天的要素,遺伝的要素,感染などの種々の説が挙げられるが,いまだ解明されていない.肝外胆管を中心とした炎症性変化により破壊され閉塞する.

▼疫学

 出生1/10,000~15,000例にみられ,女児に多い.

▼分類

 胆管閉塞部位によりⅠ型(総胆管閉塞),Ⅱ型(肝管閉塞),Ⅲ型(肝門部閉塞)に分類される.全体の約85%がⅢ型で,10%程度はⅠ型である.Ⅰ型には,総胆管に囊胞を認めるⅠ-cyst型が含まれ,先天性胆道拡張症との鑑別が必要である.

▼臨床症状

 新生児期から乳児期早期に症状が出現する.新生児黄疸が消失せずに,生後1か月を過ぎても遷延性の黄疸を認める.また,肝腫大や淡黄色便や灰白色便,褐色尿も認める.脂溶性ビタミンK吸収障害によりけいれん頭蓋内出血をきたすこともある.その他,無脾・多脾症候群,腸回転異常症,十二指腸前門脈などの内臓奇形を伴うことが多い.

▼診断

生化学検査

 新生児肝炎との鑑別が重要となる.胆道閉鎖症では,直接ビリルビン優位の血清ビリルビン上昇を認める.胆汁うっ滞を反映し,リポ蛋白Xが強陽性となる.

腹部超音波

 簡便かつ非侵襲的であるため,最初に行われる.緊満性が乏しく壁が波打っているような胆囊を認めること(図5-31a)triangular cord(図5-31b)とよばれる門脈左右枝の腹側に高輝度帯(結合組

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