診療支援
治療

1 胆囊炎
acute cholecystitis
田中 麗奈
(東京医科大学講師・消化器内科)
糸井 隆夫
(東京医科大学主任教授・消化器内科)

▼定義

‍ 急性胆囊炎とは胆囊に急性に生じた炎症疾患で,多くは胆石が胆囊管や胆囊頸部に嵌頓することに起因する.

▼病態

 胆囊炎は胆囊管閉塞により胆囊内の胆汁がうっ滞,胆囊内圧が上昇し炎症反応を生じるために起こる.多くは胆石の嵌頓が原因で発症するが,胆囊の血行障害,化学的な傷害,細菌,原虫,寄生虫,膠原病,アレルギー反応,術後や長期禁食などさまざまな要因が挙げられる.胆汁がうっ滞し胆囊内圧が上昇すると,ホスホリパーゼAの分泌が誘導され,またプロスタグランジンが放出され粘膜傷害が起こり炎症が引き起こされる.さらに胆汁酸やコレステロールによる化学刺激や細菌感染が加わることで炎症が進行する.

‍ 急性胆囊炎における胆汁の細菌培養陽性率は40~50%であり,発症早期にはあまり細菌感染は関与していないと考えられている.細菌の感染経路としては十二指腸乳頭を介する逆行性感染が多いといわれ,そのため起因菌の多くは腸内細菌由来であり大腸菌やクレブシエラなどのグラム陰性桿菌や腸球菌によるものが多い.

▼疫学

 胆囊炎の多くは胆石が原因であるが,わが国では人口の約10%が胆石を保有していると推定され,無症候性胆石保有者の有症状化率は15.5~51%といわれている.

▼分類

 急性胆囊炎は発症時期とその病理学的所見によりに以下に分類される.

浮腫性胆囊炎

 発症数日の早期の段階で,毛細血管・リンパ管のうっ滞・拡張を主体とする胆囊炎である.胆囊壁はうっ血し浮腫状となるが,組織学的には胆囊組織は温存されていて,漿膜下層に細小血管の拡張と著しい浮腫がみられる.

壊疽性胆囊炎

 発症3~5日で浮腫性変化の後に組織の壊死出血が起こった胆囊炎である.内圧の上昇により胆囊壁を圧迫するようになると,細小動脈の血栓形成や閉塞が起こり血行障害により組織の壊死が発生する.組織学的には,各層の所々に斑紋状の壊死層がみられるが,全層性の壊死層

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