疾患を疑うポイント
●胆囊摘出(胆摘)術後に発症する.
学びのポイント
●原因が多岐にわたっており,器質的病変,機能的障害などによる.
▼定義
胆石症や胆囊ポリープなどの胆囊疾患に対して胆摘術を施行した後に,上腹部痛,発熱,黄疸などの腹部症状が持続または増強,あるいは,悪心,腹部膨満感,便通異常などの不定愁訴などが新たに出現する状態を指す.
▼病態
多くの場合は,胆摘後の胆石遺残や再発,膵炎,胆管炎,十二指腸乳頭炎,胆管狭窄,癒着障害などによる症状である.また,明らかな病変がなく,胆汁の排泄障害が生じる胆道ジスキネジーあるいはOddi括約筋機能不全(sphincter of Oddi dysfunction:SOD)に起因することもある.
▼疫学
胆囊摘出後症候群は,胆摘患者の5~40%に発生するとされる.
▼診断
➊器質的病変の診断
まずは,腹部超音波,腹部CT,MR胆管膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP),内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)などで,器質的病変の有無を確認する.
➋機能的障害の診断
胆道シンチグラフィーで胆汁排泄障害の有無を診断する.また,MRCPの連続撮影やERCPガイド下のマノメトリー(検圧法)でSODが診断可能な場合もある.
➌鑑別診断疾患の除外
臨床的に類似した症状を呈する疾患は多いが,頻度の高い疾患は,消化性潰瘍,逆流性食道炎やLemmel(レンメル)症候群などである.
▼治療
本症候群の原因は多岐にわたっており,原因に応じた治療を選択することが原則である.本症の背景因子として心身症が挙げられており,精神安定薬や抗不安薬が有効である場合もある.
▼予後
原因が解明された場合,治療後の予後は良好である.