診療支援
治療

1 急性膵炎
acute pancreatitis
眞嶋 浩聡
(自治医科大学附属さいたま医療センター・消化器内科教授)

疾患を疑うポイント

●アルコール多飲者,胆囊結石症患者に生じた腹痛.ただし,特発性も多い.

●飲酒後や脂分の多い食事後の腹痛.

●胸膝位で軽減する腹痛.

学びのポイント

●厚生労働省の診断基準を参照(上腹部痛,膵酵素の上昇,膵炎の画像所見).

●致死的経過となる重症例を除き,一般的には可逆性で予後良好.予後因子スコア,造影CT Gradeにより重症度を判定し,加療する.

●呼吸・循環モニタリングが重要.血管透過性亢進による血管内脱水に注意し,尿量をみながら初期に大量輸液を行う.

●SIRS,MOF,DICなどの合併症に注意.

▼定義

 急性膵炎は,膵腺房細胞で産生・貯蔵された消化酵素がなんらかの原因によって膵内で活性化されて起こる自己消化と,サイトカイン・ケモカインなどの液性因子の放出や炎症細胞浸潤によって引き起こされる炎症が連鎖して,膵臓の内外に障害を引き起こす疾患である.

▼病態

 急性膵炎はこれまで,トリプシノゲンの異所性活性化(膵内でのトリプシン生成)を引き金として,連鎖的にさまざまなプロテアーゼが活性化して自己消化に至るという機構が主要な発症機構と考えられてきた(トリプシン中心説).しかし,さまざまなエビデンスの蓄積から,NF-κBの活性化,小胞体ストレス,酸化ストレス,オートファジー不全などの多くの異常が並行して進行し,急性膵炎の発症に至るという多中心説が提唱されている.

 膵腺房細胞は食物の消化に必要な消化酵素の大部分を分泌する.消化酵素のほとんどは非活性型の前駆体として酵素原顆粒に貯蔵されている.コレシストキニンやアセチルコリンの刺激によって分泌され,十二指腸内のエンテロキナーゼによってトリプシノゲンがトリプシンに活性化される.このトリプシンによってさまざまな消化酵素が活性化される.急性膵炎では,なんらかの原因によって消化酵素が膵腺房細胞内で活性化される.腺房細胞が障害され,サイトカ

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