診療支援
治療

3 膵癌
pancreatic cancer
五十嵐 久人
(五十嵐内科・副院長)
伊藤 鉄英
(福岡山王病院・肝臓・胆のう・膵臓・神経内分泌腫瘍センター・センター長)

疾患を疑うポイント

●高齢者に多い.

●心窩部痛,背部痛,閉塞性黄疸,食欲不振,体重減少,糖尿病増悪が診断の契機となることが多いが,無症状のこともある.

学びのポイント

●90%が膵管由来の膵管癌.

●高齢者に多い.

●心窩部痛,背部痛,閉塞性黄疸,食欲不振,体重減少,糖尿病増悪が診断の契機となることが多いが,無症状のこともある.

●早期発見が困難であり,発見時には既に進行例が多い.手術可能例は20~30%程度.

●悪性度が高く,術後再発・転移も多い.

●予後は非常に不良.

●近年,早期診断のためのモダリティの開発や,新規薬物療法の開発による予後の向上が少なからず認められる.

▼定義

 膵臓から発生した癌腫.膵管上皮から発生した膵管癌が多く,膵臓に発生する腫瘍性病変の80~90%を占める.

▼病態

 一般的に膵癌といえば浸潤性膵管癌を指す.2018年の癌統計予測によると,膵癌年間罹患数(40,000人)と死亡数(34,900人)が近似しており,消化器癌のなかで最も予後不良な癌である.予後不良な要因としては,①生物学的悪性度が強い,②膵臓の解剖学的位置も影響し拡がりやすい,③画像診断の進歩により診断能は進歩しているが,依然として早期発見が困難,④ハイリスクグループの設定が困難で,特異的な腫瘍マーカーがない,⑤70~80%の患者は診断時にすでに進行例であり切除不能,などが挙げられる.

▼疫学

 膵癌は近年増加傾向にあり,部位別癌死亡率の第4位となった.男女比は1.5:1.0で男性に多く,60~70歳代に罹患年齢のピークがある.膵癌のリスクファクターとしては表5-34に挙げたものが考えられている.特に膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm of pancreas:IPMN)や腫瘍性膵囊胞は膵癌の前駆病変として慎重な経過観察が勧められる.

▼診断

臨床

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