診療支援
治療

2 高血糖高浸透圧症候群
hyperglycemic hyperosmolar syndrome(HHS)
廣田 勇士
(神戸大学医学部附属病院・糖尿病・内分泌内科講師)
小川 渉
(神戸大学大学院教授・糖尿病・内分泌内科学)

疾患を疑うポイント

●2型糖尿病患者で軽度の意識レベル低下を認めた場合に疑う.

●著明な脱水に伴う皮膚や口腔粘膜の乾燥,血圧低下,頻脈,精神症状も伴うことが多い.

学びのポイント

●2型糖尿病患者がなんらかの誘因により著しい高血糖を呈した結果,脱水,高浸透圧となった状態.

●神経症状や精神症状が前面に出る場合もあり,脳血管障害やけいれんを伴う疾患との鑑別も必要.

●高齢者に多く,死亡率も高い.

▼定義

 著しい脱水と高血糖による高浸透圧が病態の中心であり,循環不全をきたす状態である.

▼病態

 2型糖尿病に発症しインスリン欠乏は絶対的ではないため,脂肪分解とケトン体合成も糖尿病ケトアシドーシスほど高度ではない.高血糖の程度は糖尿病ケトアシドーシスに比較して高く600~1,500mg/dLとなり,高浸透圧のため循環不全,循環虚脱による症状を生じる.脳神経系の細胞内脱水と循環虚脱による脳の酸素不足により意識障害を生じ,進行すると精神錯乱,意識障害,昏睡へと至る.浸透圧利尿により脱水が高度となり,腎血流が減って尿に排出されるブドウ糖の量が減ると,さらに高血糖を増悪させると考えられる.

 発症の契機として,感染症,高カロリー輸液,心血管疾患,脳血管障害,ステロイドや利尿薬などの薬剤投与が多い.高齢者に生じやすいが,高齢者は腎機能低下が生じやすいこと,口渇中枢の機能低下があることから,発症しやすいことが知られている.また,高血糖高浸透圧症候群と糖尿病ケトアシドーシスがオーバーラップする症例も多く,両疾患の明確な区別が難しい場合も多い.

▼診断(表6-11)

 高血糖と高浸透圧で診断する.典型的な検査所見は,600mg/dL以上の高血糖,320mOsm/L以上の高浸透圧,動脈血pHは7.3以上,尿中ケトン体は陰性か軽度陽性である.血清浸透圧は,〔2×Na(mEq/L)+血糖値(mg/dL)/18+BUN(mg

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