▼定義
糖尿病足病変には,広義には足趾間や爪の白癬症,足や足趾の変形や胼胝,足潰瘍や足壊疽まで幅広い病態が含まれる.国際的には,神経障害や血流障害を合併した糖尿病患者の下肢に生じる感染症,潰瘍,深部組織の破壊性病変と定義されている.
▼病態
足潰瘍や壊疽の発症には神経障害(末梢神経障害,自律神経障害)と血流障害が関与する.血流障害,特に重症虚血肢が合併すると難治性となり切断リスクが高くなる.これらの障害を有する足に靴ずれ,外傷,熱傷,胼胝・鶏眼の亀裂,爪病変などの外的要因が加わると潰瘍が形成され,さらに易感染性により感染が加わると壊疽となる.
▼疫学
わが国における糖尿病患者の足壊疽合併率は0.7%(平成19年厚生労働省国民健康・栄養調査)であり,糖尿病患者での下肢切断率は健常者より15~40倍高いとされている.下肢切断に至った糖尿病患者の生命予後は不良であり,下肢切断後の死亡率は3年で約50%,5年で約70%と報告されている.
▼診断
糖尿病患者における足潰瘍,足壊疽の診断,重症度評価,治療計画はベッドサイドで迅速に行うことが肝要である.局所病変の評価だけでなく神経障害,血流障害,足変形の評価も予後判定,治療計画に必須である.
➊神経障害の診断
本章「糖尿病性神経障害」の項(→)に準じる.
➋血流障害の診断
皮膚色調,皮膚温,足背動脈・後脛骨動脈拍動などをみる.足関節/上腕血圧比(ankle brachial pressure index:ABI)は,末梢動脈疾患(peripheral artery disease:PAD)のスクリーニングとして有用である.ABI≦0.9でPADの存在,<0.4で重症の虚血が疑われる.
➌足の変形の診断
足趾変形,凹足(甲高になり,中足骨骨頭部が下に突出)や外反母趾などのほかにCharcot(シャルコー)足変形の有無を診る.Charcot足は,骨・関