診療支援
治療

(4)家族性Ⅲ型高脂血症
familial type Ⅲ hyperlipoproteinemia
井出 佳奈
(千葉大学大学院・内分泌代謝・血液・老年内科学)
横手 幸太郎
(千葉大学大学院教授・内分泌代謝・血液・老年内科学)

疾患を疑うポイント

●TC,TGともに高値を示し,リポ蛋白電気泳動でbroad βパターンを認める.

●手指や指間に手掌線状黄色腫を認める.

学びのポイント

●家族性Ⅲ型高脂血症はbroad β病ともよばれる遺伝性高脂血症.

●アポEの異常(E2/E2またはE欠損)を基盤とし,レムナントリポ蛋白が蓄積する.

●冠動脈疾患や頸動脈硬化,閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患の合併が多く,その発症予防のため早期発見と早期治療が重要.

▼定義

‍ アポリポ蛋白E(アポE)の異常によりレムナントリポ蛋白の蓄積をきたす原発性高脂血症.

▼病態

 アポEはカイロミクロンレムナントやVLDLレムナントが肝臓に取り込まれる際に重要なアポリポ蛋白である.アポEにはE1からE7の6種類(E6はない)の型が存在するが,E2は受容体との結合能が低下している.そのためE2のホモ接合体(E2/E2)やE欠損の個体はアポEの機能障害を呈し,レムナントの肝臓での取り込みが障害され血中に蓄積する.しかしアポEの異常のみでは脂質異常を呈さないことが多く,ほかの異常の合併(家族性高コレステロール血症,家族性複合型高脂血症,糖尿病,肥満,甲状腺機能低下症など)や加齢,閉経,生活習慣などの要因が加わることで脂質異常症を発症する.

▼疫学

 わが国のアポE2/E2の頻度は0.2%程度だが,Ⅲ型高脂血症を発症する頻度は0.01~0.02%.

▼診断

 原発性高脂血症調査研究班の診断基準(表6-30)に従い診断を行う.

身体的特徴

 結節性黄色腫や皮膚線状黄色腫(手指や指間),動脈硬化性疾患(冠動脈疾患,腎動脈硬化,末梢動脈疾患)を合併する.

血清脂質

 総コレステロール(total cholesterol:TC),中性脂肪(triglyceride:TG)ともに上昇するが,正常域をやや超えるものからTC 500mg/dL程度,TG 2,000mg/d

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