診療支援
治療

2 脂肪吸収不全症
fat malabsorption syndrome
園田 紀之
(九州大学大学院講師・病態制御内科学)
小川 佳宏
(九州大学大学院教授・病態制御内科学)

▼定義

 脂肪吸収不全症は先天的・後天的要因により発症し,下痢,脂肪便,体重減少,るい瘦,貧血,倦怠感,腹部膨満,浮腫などのさまざまな症状が出現する.吸収されない脂肪は,脂溶性ビタミン(A,D,E,K)を捕捉し,欠乏症を引き起こす.吸収部位である小腸疾患以外にも,膵・肝胆道系疾患や胃・十二指腸疾患,さらには全身性疾患でも発症しうる.

▼分類,病態,治療

 長鎖脂肪酸トリグリセリドは,膵臓リパーゼを含む酵素にて消化されたあと,胆汁酸により水溶性になり吸収される.そのあと小腸細胞内で再合成され,蛋白,コレステロール,およびリン脂質と結合してカイロミクロンを形成し,これがリンパ系を経由して輸送される.中鎖脂肪酸トリグリセリドは直接静脈系を介して吸収される.したがって,先天性リポ蛋白異常症,消化管運動障害,抱合型胆汁酸濃度の低下,膵臓からの消化液産生低下,小腸粘膜障害,吸収後の輸送経路であるリンパ管障害や静脈,門脈疾患で脂肪吸収不全が発症しうる.先天性のヘテロ接合体の多くは無症状か軽微な症状にとどまる.後天性は消化器疾患などの脂肪吸収過程や吸収後の輸送経路の障害を背景に発症することが多く,器質的疾患の鑑別が重要である.

先天性脂肪吸収不全症

1)βリポ蛋白欠損症(無βリポ蛋白血症)

 本章のを参照.

2)カイロミクロン停滞症(アンダーソン病)

 本章のを参照.

3)家族性低βリポ蛋白血症

 本章のを参照.

4)リパーゼ欠損症

 先天的に膵リパーゼが欠損しており,生後間もなく脂肪吸収障害により脂肪便を呈する.脂肪吸収障害による脂肪便がみられるが,胃液の脂肪分解作用,膵液中エラスターゼの代償的作用などにより食物中の脂肪の約50%は消化吸収される.治療は過剰な脂肪摂取を避ける,膵酵素剤の投与,MCTミルクの投与により脂肪便の改善を認め,予後は良好である.

後天性脂肪吸収不全症

 広義の吸収不良症候群のなか

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?