▼定義・病態・疫学
家族性アミロイドーシスの原因となるアミロイドの前駆蛋白質は,トランスサイレチン(transthyretin:TTR)とアポA-Ⅰ,ゲルゾリンなどである.TTRに基づく家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy:FAP)が最も患者数が多く,遺伝子変異も100種類以上が知られている.TTRは分子量約14,000で,127個のアミノ酸よりなり,主に肝臓で産生され,血清中では4量体を形成している.血中半減期は約2日で,栄養状態の指標にも用いられる.甲状腺ホルモンやビタミンAの輸送蛋白である.わが国ではTTR30番目のアミノ酸のバリンがメチオニンに変異するタイプが最も多い.以下,TTR型FAPを中心に述べる.常染色体優性遺伝形式を示し,30歳代での発症が多い.
▼症状
手袋靴下型の感覚障害優位型多発ニューロパチーが初発症状である.筋萎縮や筋力低下などの運動神経障害や自律神経障害も早期より出現し,起立性低血圧,発汗障害,交代性下痢・便秘,男性では陰萎も認める.心伝導障害や心不全もしばしば認められ,褥瘡や低栄養,甲状腺機能低下症,腎機能障害なども起こる.髄膜や中枢神経系へのアミロイド沈着により認知機能低下,一過性局所性神経脱落症状などを呈し,硝子体混濁をきたすこともある.
▼診断
上記症状に加え,末梢神経障害の家族歴があれば,本疾患を強く疑う.生検は腹壁脂肪,胃・十二指腸粘膜,口腔粘膜などで施行されることが多い.免疫組織化学染色によりTTRを証明する.遺伝性の場合は十分なインフォームドコンセントを行い,末梢血のTTR遺伝子を解析する.血清診断として,アミノ酸置換により質量の変化したTTRを質量分析で検出することも可能である.
▼治療
肝移植が有効だが,部分生体肝移植も行われている.本疾患患者から摘出された肝臓にはアミロ
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