診療支援
治療

3 メープルシロップ尿症
maple syrup urine disease(MSUD)
中村 公俊
(熊本大学大学院教授・小児科学)

疾患を疑うポイント

●新生児マススクリーニングの対象疾患であるが,新生児期に発症する古典型の病態が存在し,生後1週間程度で嘔吐,けいれん,昏睡などの症状をきたす.

●マススクリーニングの結果が判明する前に発症していることが少なくないため,上記の症状がみられた新生児では,血液ガス検査によるアシドーシスの有無を確認することが診断のきっかけとなる.

学びのポイント

●アミノ酸代謝異常症に分類されるが,αケト酸脱水素酵素複合体の欠損によりαケトイソカプロン酸などのαケト酸の代謝が障害されている.そのため,ロイシン,イソロイシン,バリンなどのアミノ酸が上昇するとともにαケト酸が上昇し,アシドーシスをきたす.

▼定義

‍ 分枝鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体(branched-chain α-keto acid dehydrogenase complex:BCKD complex)はE1α,E1β,E2,E3 の4つのサブユニットから構成される複合体であり,メープルシロップ尿症は,各サブユニットをコードする遺伝子の異常により発症する.

▼病態

 分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acid:BCAA)であるバリン,ロイシン,イソロイシンは分枝鎖アミノトランスフェラーゼ,さらにBCKD複合体によってアシルCoAであるイソブチリルCoA,イソバレリルCoA,αメチルブチリルCoA へと変換される.MSUDは,この代謝過程の異常であるため,αケト酸の増加によるアシドーシスとともに,バリン,ロイシン,イソロイシンの上昇を認める.臨床症状や発症時期は多彩であり,新生児期に発症する場合は,元気がない,哺乳力低下,不機嫌,嘔吐などで発症する.進行すると意識障害,けいれん,呼吸困難,筋緊張低下,後弓反張などが出現する.

▼疫学

 常染色体劣性遺伝形式であり,わが国における発生頻度は,50万人に1人とされ

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