診療支援
治療

5 有機酸代謝異常症
disorders of organic acid metabolism
中村 公俊
(熊本大学大学院教授・小児科学)

疾患を疑うポイント

●新生児マススクリーニングの対象となっているが,マススクリーニングの結果が判明する前に発症していることが少なくない.

●代謝性アシドーシスを認めるほか,急性期には高アンモニア血症,低血糖,トランスアミナーゼの上昇などがみられる.

学びのポイント

●有機酸代謝異常症の一部は,タンデムマス・スクリーニングにより新生児期に診断可能となった.

●有機酸が体内に蓄積すると,酸塩基平衡を維持するために有機酸の尿中への排泄が亢進する.そのため,有機酸は尿中に多く検出される傾向があり,確定診断には尿中有機酸分析が有用.

▼定義

 アミノ酸代謝の過程でアミノ基が除去された代謝産物が,その後の代謝過程の酵素の異常によって蓄積し,アシドーシスをはじめとするさまざまな病態をきたす.

▼病態

 代謝経路と欠損酵素の違いによって,多くの有機酸代謝異常症が知られている.新生児マススクリーニングの対象となっているものだけでも,メチルマロン酸血症,プロピオン酸血症,イソ吉草酸血症,複合カルボキシラーゼ欠損症,メチルクロトニルグリシン尿症,ヒドロキシメチルグルタル酸(HMG)血症,βケトチオラーゼ欠損症,グルタル酸血症1型などがある.検査ではアニオンギャップの増大を伴うアシドーシス,高アンモニア血症,ケトン体陽性などを認める.成長や発達の遅れがみられ,発熱や下痢などのsick dayをきっかけに症状がみられることがある.血中アシルカルニチン分析や尿中有機酸分析によって診断が可能である.

▼疫学

 上記のタンデムマス・スクリーニング対象の有機酸代謝異常症はすべて常染色体劣性遺伝形式である.わが国の有機酸代謝異常症の頻度は25,000人に1人とされている.

▼診断・治療

 哺乳不良,嘔吐,傾眠,さらにけいれん,昏睡を発症する.発熱や嘔吐などのsick dayに筋痛や全身倦怠感をきたし,急性脳症に至ることもある.これらの

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?