診療支援
治療

1 弾性線維性仮性黄色腫
pseudoxanthoma elasticum(PXE)
池田 聡司
(長崎大学大学院講師・循環器内科学)

疾患を疑うポイント

●頸部,腋窩,鼠径部,肘窩,臍周囲の皮膚病変(集簇性または線状に分布する黄白色丘疹.図6-39a)

学びのポイント

●PXEは弾性線維の変性や断裂,石灰化を特徴とした全身性の疾患.

●皮膚,眼,心血管系や消化管に病変を生じる.

●常染色体劣性遺伝のまれな疾患.

●PXEに対する特異的で有効な治療法は確立しておらず,各病変に応じた対症療法が主である.

▼定義

‍ ATP binding cassette C6(ABCC6)遺伝子変異による弾性線維の変性や断裂,石灰化を特徴とする常染色体劣性遺伝性疾患.

▼病態

 進行性に皮膚や粘膜,網膜,血管,消化管などの弾性線維に富む臓器や組織が障害される.

皮膚・粘膜病変

 頸部,腋窩,鼠径部,肘窩,臍周囲に集簇性または線状に分布する黄白色丘疹(図6-39a,b)で,口腔粘膜に黄色斑がみられる.組織像としては,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色(図6-39c)で,真皮中層~下層に好塩基性に染色される石灰化を伴う変性弾性線維を認め,von Kossa(フォン・コッサ)染色で石灰化沈着を認める(図6-39d:黒色調に染色).

眼病変

 Bruch(ブルッフ)膜の断裂に伴う網膜色素線条を認め,さらに網膜下出血や脈絡膜新生血管を生じる.眼底にオレンジ皮様変化を認めることもある.

心血管病変

 筋性動脈や弾性動脈の内弾性板の弾性線維が変性し,断片化や石灰化を生じて血管内腔の狭小化をきたす.また心内膜下にも同様の変化を生じる.そのため,冠動脈疾患,脳血管障害や末梢動脈疾患などの血管病や僧帽弁逸脱症などの弁膜症,心筋の拡張能障害,拘束性心筋症などの心筋疾患あるいは高血圧症を合併する.

消化管病変

 消化管粘膜下の動脈中膜の石灰化などにより血管壁の障害,変形をきたし,消化管出血を生じることもある.

▼疫学

 25,000~100,000人に1人程度の発症と

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