疾患を疑うポイント
●甲状腺中毒症に高熱,循環不全,意識障害,下痢・黄疸などの多臓器不全を合併しているときや,生体の非代償性状態で致死的な状態が疑われるときに強く疑う.
学びのポイント
●甲状腺クリーゼとは,甲状腺中毒症が重症化し,多臓器不全,非代償性状態を特徴とする致死的な救急疾患.
●早期診断・早期治療が重要であり,疑いの段階から治療を開始する.
●各臓器専門医の協力を得て,集学的治療を行う.
▼定義
甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患が存在し,これになんらかの強いストレスが加わったときに,甲状腺ホルモン作用過剰に対する生体の代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果,生命の危機に直面した緊急治療を要する病態をいう.
▼病態
甲状腺中毒状態の存在下に,多臓器における非代償性状態を特徴とする致死的な病態である.しばしば誘因として発症するが,発症機序は不明である.甲状腺ホルモンレベルが著明に高くない場合でも発症する.
▼疫学
まれな病態であるが,日本において年間約250件発生している.甲状腺基礎疾患としてはBasedow(バセドウ)病が最も多いが,機能性甲状腺結節や破壊性甲状腺中毒症に伴って発症した報告もある.誘因としては不規則な抗甲状腺薬の服薬,感染が多い.
▼臨床症状
全身性症候,臓器症候,甲状腺基礎疾患関連症候の3つに大別できる.全身性症候は,高体温(しばしば38.0℃以上),高度の頻脈や多汗,意識障害,ショックなどが代表的である.臓器症候として,息切れ・動悸などの循環不全・呼吸不全,興奮・昏迷・昏睡などの中枢神経症状,下痢・嘔吐・黄疸などの消化器症状など特徴的である.甲状腺基礎疾患関連症候としては,甲状腺腺腫や眼球突出が挙げられる.
甲状腺ホルモンレベルを把握するために,FT3,FT4,TSHを測定する.ただし,甲状腺クリーゼが強く疑われ全身
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