疾患を疑うポイント
●易疲労感,浮腫,寒がり,便秘など非特異的な症状の原因となる.
●コレステロール値やCK値の上昇がみられる.
●硬く腫大した甲状腺腫を触れる.
●先天性甲状腺機能低下症ではクレチン症という特有な発達障害を呈する.
学びのポイント
●頻度が高いが見逃されることも少なくない.症状や所見の組み合わせから本疾患を疑うことが重要である.
●障害部位によって,原発性と続発性(中枢性)に分類される.
●先天性甲状腺機能低下症ではクレチン症とよばれる特徴的な発達障害を示す.
●ホルモン補充を行うが,副腎皮質機能低下症合併例では副腎皮質ホルモンを先に補充する.
▼定義
甲状腺ホルモンの合成・分泌低下により甲状腺ホルモンが組織に十分作用しない疾患である.特殊な例として,組織が甲状腺ホルモンに反応しない状態も広義の甲状腺機能低下症に含まれる.
▼病態
甲状腺機能低下症は,さまざまな原因のために甲状腺ホルモンの合成・分泌能またはホルモンに対する反応性が低下した「状態」を示す病名といえる.代表的な原因を,分類とあわせて表7-18図に示す.
甲状腺機能低下症の症状・徴候は,①新陳代謝低下によるもの,②代謝が低下して蓄積したムコ多糖類の組織沈着によるもの,③神経発達や成長の障害によるものに大別される.
新陳代謝低下による症状は全身に及び,易疲労感,寒がり,精神活動の低下(無気力,動作緩慢,嗜眠,記憶力低下),徐脈・心不全,便秘,皮膚乾燥,脱毛,月経異常などが認められる.身体所見としては,アキレス腱反射の弛緩相遅延が特徴である.また,代謝低下により血清中のコレステロール値やCK値が上昇する.
ムコ多糖類が組織に沈着すると粘液水腫という病態となり,四肢の圧痕を残さない浮腫が特徴的である.眼瞼・口唇にも浮腫が生じ,粘液水腫様顔貌といわれる.舌が肥大して言語緩慢となったり,声帯浮腫により嗄声となったりする.
まれ