疾患を疑うポイント
●甲状腺に多発する囊胞や結節性病変があり,エコーで悪性所見を認めない場合に診断される.
▼定義
甲状腺内に複数の充実性結節や囊胞が多発する非腫瘍性病変で,日常臨床で最も高頻度に認める.欧米では多結節性甲状腺腫(multinodular goiter)とよばれる.単発性の場合は腺腫様結節(adenomatous nodule)という.甲状腺機能は通常基準範囲内であるが,自律性機能性甲状腺結節〔autonomously functioning thyroid nodule:AFTN,Plummer(プランマー)病〕の場合には潜在性あるいは顕性の甲状腺機能亢進症をきたす.
▼病態
多発性の非腫瘍性結節で病理では正常の濾胞上皮細胞が過剰に増殖して過形成を呈した状態をさす.その途中段階で破壊や変性をきたして,出血,囊胞変性,線維化,石灰化,炎症など種々の組織変化をきたす.破壊と増殖の原因はさまざまであり,橋本病,Basedow病,先天性甲状腺機能低下症,薬剤性,ヨウ素過剰摂取,先端巨大症〔GH過剰により甲状腺細胞の増殖がみられ,約70%に腺腫様甲状腺腫がみられるとの報告もある〕などがある.先天性に甲状腺ホルモン合成障害をきたす病態(dyshormonogenetic goiter)では,臨床的に甲状腺機能低下症をきたし甲状腺はびまん性に腫大してくる場合が多いが,時に腺腫様甲状腺腫の像を呈する.
▼症状
結節が多発して甲状腺腫をきたすが,小さな腺腫様結節や囊胞が多発している場合は甲状腺全体の腫大はみられない場合もある.結節が著明に増大してくると気管や食道を圧迫して呼吸困難や嚥下困難を呈することもある.まれに結節内出血や囊胞の増大に伴い甲状腺に痛みが生じることがあり,亜急性甲状腺炎との鑑別が必要となる.また腺腫様結節や濾胞腺腫で遺伝子変異が起こり甲状腺ホルモンを過剰に産生して
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