疾患を疑うポイント
●無症状のことが多い.
●健康診断での視触診,胸部X線検査での気管偏位,頸動脈エコーなどが発見契機となることも多い.
学びのポイント
●良性腫瘍のほとんどは濾胞腺腫である.
●臨床上は濾胞癌と鑑別できないことがある.
●臨床上は腺腫様甲状腺腫と鑑別できないことも多い.
●たいていは無治療でよいが,増大することがある.
▼定義
甲状腺濾胞上皮に由来し,病理組織学的に明らかな悪性所見(被膜浸潤,血管浸潤,乳頭癌様核所見)を欠く腫瘍.通常は単発で,比較的均一な濾胞構造を呈し,薄い被膜に囲まれている点で,良性結節の1つである腺腫様甲状腺腫と異なる.
▼病態
甲状腺内で腫瘤を形成する.ただし症状を自覚することは少ない.卵形大になると嚥下時に視認できるようになり,家人に指摘されたり自覚することがある.大きな腫瘤では外見上も目立ち,さらには気管を圧排あるいは圧迫し,胸部X線検査で気管の偏位を認めるようになる.しかし,気道狭窄の症状を呈することはきわめてまれである.
▼疫学
甲状腺良性腫瘍の有病率や罹患率についての正確な調査報告はない.健診あるいは検診における甲状腺腫瘤の発見頻度は触診で1.5%,超音波検査で18%と報告されている.このうち癌の発見頻度はそれぞれ0.2%,0.5%であることから,良性腫瘤の発見頻度は触診で約1%,超音波検査で約17%と推定されるが濾胞腺腫の頻度は不明である.
▼分類
甲状腺良性腫瘍の大半は,病理組織学的には濾胞腺腫である.
▼診断
診断には触診,超音波検査,穿刺吸引細胞診が有用である.
➊触診
良性腫瘍の触診所見は表面平滑であり,周囲(特に気管)に対して可動性があり,かつ弾性軟の硬さが特徴である.
➋超音波検査
超音波検査では周囲の正常甲状腺との境界が明瞭な腫瘤像を呈する(図7-20図).内部はほぼ充実性から,囊胞部分を含む混合型まで多彩である.
➌穿刺吸引細胞診
細