診療支援
治療

4 甲状腺悪性腫瘍
malignant thyroid tumor
岡本 高宏
(東京女子医科大学教授・乳腺・内分泌・小児外科学)

疾患を疑うポイント

●無症状のことが多い.

●時に進行して嗄声や頸部腫瘤を呈する.

学びのポイント

●悪性腫瘍の多くは乳頭癌で,予後良好である.

●濾胞癌は濾胞腺腫との鑑別が難しい.

●未分化癌は予後不良である.

▼定義

 甲状腺濾胞上皮に由来しそれぞれの組織型に特徴的な悪性所見を示す腫瘍.また,甲状腺傍濾胞細胞(C細胞)に由来する悪性腫瘍が髄様癌である.

▼病態

 甲状腺内に腫瘍がとどまれば症状を自覚することは少ない.増大すると家人に指摘されたり,自覚することがある.甲状腺外に進展すると反回神経麻痺(嗄声,むせ)などの症状を呈する.未分化癌は急速に増大,進行し予後不良である.

▼疫学

 わが国の2018年における甲状腺癌推定罹患数は19,800例(男性5,200例,女性14,600例),人口10万人あたりの年齢調整罹患率は男性5.0,女性13.3であった.一方,2017年における甲状腺癌死亡数は1,773例(男性531例,女性1,202例),人口10万人あたりの年齢調整死亡率は男性0.4,女性0.5であった.

▼分類

 甲状腺の病理組織型には乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,そして未分化癌がある.

▼診断

 診断には触診,超音波検査,穿刺吸引細胞診が有用である.

触診

 乳頭癌の腫瘤は硬く,辺縁が不整で表面は不平滑,可動性に乏しいことが多い.濾胞癌は表面平滑で可動性のある腫瘤で良性腫瘍と同様の所見である.

超音波検査

 乳頭癌では辺縁不整の腫瘤像を呈する.濾胞癌の所見は良性腫瘍に似ているが,充実性で内部に放射状構造や殻状石灰化を認めることがある.

穿刺吸引細胞診

 細胞診の感度は95~97%,特異度は50%である.細胞診の診断カテゴリーのうち「良性」「意義不明」「濾胞性腫瘍」「悪性の疑い」「悪性」における悪性の頻度はそれぞれ5%,17%,25%,72%,98%と推定されている.

血液検査

 髄様癌では血中カルシトニンとC

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