診療支援
治療

3 悪性腫瘍随伴高カルシウム血症
malignancy associated hypercalcemia
山内 美香
(島根大学准教授・内科学講座内科学第一)
杉本 利嗣
(小野病院骨代謝疾患研究所・所長)

▼定義

 悪性腫瘍が要因となって,骨吸収亢進などによる血中へのCaの動員が過度となり,高Ca血症をきたす場合を悪性腫瘍随伴高カルシウム血症(malignancy associated hypercalcemia:MAH)とよぶ〔第9章「高カルシウム血症」の項()も参照〕.

▼病態

 MAHは,骨以外の臓器に存在する癌が分泌する液性因子により骨吸収が亢進し,高Ca血症をきたす液性悪性腫瘍性高Ca血症(humoral hypercalcemia of malignancy:HHM)と,骨に存在する癌が骨吸収を亢進させる局所骨融解性高Ca血症(local osteolytic hypercalcemia:LOH)の2つに大別される.

 HHMの主な原因は腫瘍細胞から分泌される副甲状腺ホルモン関連蛋白(parathyroid hormone-related protein:PTHrP)で,PTHrPはPTHと同じくPTH/PTHrP受容体(PTH1R)に結合し,高Ca血症と低リン(P)血症をきたす.しかし,PTHと異なり1,25-水酸化ビタミンD〔1,25(OH)2D〕の上昇や骨形成の亢進はきたしにくい.

 LOHは多発性骨髄腫や乳癌などの骨転移巣が局所で骨吸収を亢進することで高Ca血症をきたす.骨吸収によりCaと同様Pも骨から血中に動員されるため,血清Pが高値を示す例もしばしばみられる.LOHにおける局所の骨吸収促進には,腫瘍細胞から産生されるインターロイキン(interleukin:IL)-1,IL-6,TNF-α,マクロファージ炎症性蛋白(macrophage inflammatory protein-1α:MIP-1α)などの骨吸収促進性サイトカインが,直接,あるいは破骨細胞分化促進因子であるNF-κB活性化受容体リガンド(RANKL:receptor activator of n

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