疾患を疑うポイント
●一部の神経内分泌腫瘍が,カルチノイド症候群を引き起こす生理活性物質を分泌する.
●皮膚紅潮,消化器症状(下痢,腹痛),喘鳴などがみられる.
学びのポイント
●主な原因物質はセロトニン(下痢や腹痛を引き起こす)およびヒスタミン(皮膚紅潮,血管拡張を引き起こす).
●診断は,セロトニン代謝物である5-HIAAの検出により行う.
●治療としてはソマトスタチン誘導体が有用.
●転移性疾患であるにもかかわらず,腫瘍の成長は遅く,10~15年の生存も可能.
●「カルチノイドクリーゼ」とよばれる特殊な致死性の病態がある.
▼定義
消化管神経内分泌腫瘍〔主に中腸(小腸,虫垂,大腸近位)由来〕と一部の非腸管神経内分泌腫瘍からセロトニン,ヒスタミン,タキキニンなどのアミンやペプチドが分泌されて起こる症候群.
▼病態
主に消化管神経内分泌腫瘍によって引き起こされ,発作性の皮膚紅潮,下痢や腹痛などの消化器症状,喘鳴,ペラグラ様皮疹,右心不全などが発症する.原因物質としてセロトニン,ヒスタミン,タキキニン,プロスタグランジンなどが推測されている(表7-58図).発作性の皮膚紅潮は約80%にみられ,発汗を伴わないこと(dry flush)が特徴で赤面症とは異なる.消化器症状は腫瘍から分泌される生理活性物質(セロトニン,タキキニン,ヒスタミン)による腸管蠕動亢進作用を呈する.心不全は右心系の弁膜障害(肺動脈狭窄,三尖弁閉鎖不全)に起因する.心内膜にセロトニン2b受容体が存在し,長期にわたるセロトニン曝露で心内膜の増殖とプラーク様の線維性肥厚が形成されるためである.喘鳴もこのような生理活性物質の気管支収縮作用,ペラグラ様皮疹はトリプトファン代謝亢進によると考えられている.
▼疫学
2005年のわが国での疫学調査では,消化管神経内分泌腫瘍のうちカルチノイド症候群を呈した症例は3.4%であった.
▼分類
➊中腸由
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