診療支援
治療

【2】好中球機能異常症
disorders of neutrophil function
木村 文彦
(防衛医科大学校教授・内科学)

疾患を疑うポイント

●好中球機能の障害があり,幼少期から重篤な細菌・真菌感染を繰り返す遺伝性疾患.

学びのポイント

●好中球は病原微生物を貪食・殺菌する食細胞であり,その機能障害により自然免疫が低下する.

●酵素依存性殺菌能が障害される慢性肉芽腫症,遊走能低下・食胞内での殺菌の遅延がみられるChédiak-Higashi症候群が代表的である.

▼定義

 好中球の遊走能,接着能,貪食殺菌能のいずれかに障害があり,重篤な細菌・真菌感染に反復して罹患する先天性免疫不全症.

▼病態

 細菌や真菌が組織に侵入すると組織マクロファージや肥満細胞が反応してサイトカインやケモカインを放出する.血流中の好中球はこれらの走化因子の濃度に従って感染巣に遊走する(遊走能).このとき炎症局所に近い末梢血管壁への接着をきっかけとして,血管内皮細胞の間隙をすり抜ける(接着能).感染巣に到達した好中球は病原微生物を貪食し,細胞内顆粒内の酵素で産生される活性酸素や殺菌性酵素で殺菌を行う(貪食殺菌能).

‍ 慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease:CGD)では,NADPHオキシダーゼの構成蛋白に変異がありスーパーオキサイドや過酸化水素による殺菌が障害される.Chédiak-Higashi症候群ではリソソーム輸送調節因子をコードするCHS1/LYST遺伝子に変異があり,好中球では殺菌能と遊走能が障害される.メラニン細胞では角化細胞や上皮細胞へのメラニン輸送がうまくいかず,血小板の顆粒欠損は出血傾向を生じ,神経伝達物質の輸送障害のため神経障害も合併する.

 このほか,好中球の接着能が障害される白血球粘着不全症やミエロペルオキシダーゼ欠損症などが知られている.

▼疫学

 まれな遺伝性疾患で,本邦の患者数は,慢性肉芽腫症で300~400例程度,Chédiak-Higashi症候群で15例程度とされる.

▼分類

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