診療支援
治療

【3】伝染性単核球症
infectious mononucleosis
佐藤 謙
(帝京大学医学部附属溝口病院・第四内科教授)

疾患を疑うポイント

●思春期以降の青少年や若年成人の咽頭痛と発熱を伴うリンパ節腫脹.

●末梢血に異型リンパ球が出現し,肝逸脱酵素の上昇がみられる.

学びのポイント

●思春期以降の青少年や若年成人がEBVに初めて感染したときに発症する.

●主な感染経路は,唾液を介したもので,そのためkissing diseaseともよばれる.EBV既感染者の約15~20%は唾液中にウイルスを排泄している.

●末梢血に出現する異型リンパ球は,EBV感染リンパ球に反応して活性化したTリンパ球である.

●リンパ節腫脹があり,悪性リンパ腫との鑑別が必要であるが,発症年齢や随伴症状より,多くは鑑別が可能である.特に異型リンパ球の出現と肝逸脱酵素の上昇が鑑別に有用である.

●悪性リンパ腫とは異なり,本疾患に伴うリンパ節腫脹は経過とともに消退する.

▼定義

 思春期以降の青少年や若年成人がEpstein-Barr(エプスタイン-バー)ウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)に初感染することにより発症する疾患で,発熱・咽頭炎・リンパ節腫脹を三徴とする.

▼病態(表8-18)

 EBV感染は咽頭上皮細胞に発現している補体受容体CD21とEBVのエンベロープ蛋白gp350/220が結合することから始まる.細胞表面に吸着したEBVはエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ,増殖する.その後,主な標的細胞であるBリンパ球に感染し,Bリンパ球の増殖を促す.EBVに感染したBリンパ球に反応してCD8陽性細胞傷害性T細胞が活性化し,増殖する.血液に出現する異型リンパ球はこの活性化したTリンパ球である.

 EBVのDNAは,感染細胞内で線状から環状に変化し,核内に存在するようになる.これを潜伏感染といい,この状態は生涯にわたって維持される.

 感染から発症までの期間(潜伏期間)は約6週間(32~49日)である.発熱はピーク時には4

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