疾患を疑うポイント
●生後1週間以内の吐血や下血.
●母乳保育児の頭蓋内出血.
学びのポイント
●ビタミンK欠乏症の本態は,ビタミンK依存性凝固因子の欠乏による凝固障害である.臨床症状は,生後7日以内は消化管出血(吐血や下血)が主で,それ以降に発症する乳児ビタミンK欠乏症は,頭蓋内出血が大部分を占める.
●ビタミンK2シロップを1か月健診までに計3回投与する方法が,健常正期産児に対する標準的予防法である.
●母乳栄養児や,胆道閉鎖症・乳児肝炎などに続発する2次性乳児ビタミンK欠乏性出血症は,生後3か月まで週1回のビタミンK2シロップの投与で発症予防が可能である.
▼定義
ビタミンKの欠乏のため血液凝固第Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子の産生が低下し,凝固障害から消化管出血や頭蓋内出血などを発症する疾患である.
▼病態
ビタミンKは,脂溶性ビタミンの一種で,血液凝固因子(第Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子)や血液凝固抑制因子(プロテインC,プロテインS,プロテインZ)などの補酵素として作用する.
ビタミンKが欠乏するとグルタミン酸(glutamic acid:Glu)がγ-カルボキシグルタミン酸(γ-carboxyglutamic acid:Gla)に変換されないため,凝固活性のないGlu残基を有する前駆体(protein induced by vitamin K absence or antagonists:PIVKA)にとどまり,血液凝固障害から消化管出血や頭蓋内出血を発症する(図8-42図).
▼疫学
正確な疫学調査はないが,乳児ビタミンK欠乏性出血症の発症頻度は,わが国では出生10万対0.5人前後と報告されている.
▼分類
わが国では,出生後7日までに発症する新生児ビタミンK欠乏性出血症と,それ以降に発症する乳児ビタミンK欠乏性出血症に分類される.
▼診断
診断は,臨床症状と血液凝固検査から行う(表8-29図).
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