診療支援
治療

【1】凝固関連データの読み方
朝倉 英策
(金沢大学附属病院・病院臨床教授)

学びのポイント

●血液凝固検査は,PT,APTTが最も基本的であるが,これらのマーカーのみで評価できる疾患・病態には限界がある.DICは,PT,APTTのみでは診断できない.

●原因不明のAPTT延長に遭遇した場合には,クロスミキシング試験が有用である.

●DICやDVT,PEの評価には,D-ダイマーが有用である.

●TAT,PICは凝固線溶活性化を評価するための優れたマーカーである.

▼血栓止血学からみた血液の性格

 血液は,正常時には血管内では凝固せずに循環し,血管外では凝固して止血する.この生理的現象が時に破綻する.すなわち,血管内で凝固したり(血栓症),血管外に出ても凝固しない(異常出血)ことがある.凝固・線溶関連マーカーは,出血性疾患や血栓性疾患の診断,病態把握に重要である.

▼止血・血栓の機序

血小板と凝固因子の役割

 止血(生理)も血栓症(病態)も,血管を反応の場として血小板と凝固因子が役割を演じている.

 止血機序は,血管が破綻するとまず血小板粘着がみられ,ついで血小板凝集へと進行する(図8-28).血小板が粘着する際の糊的な成分がvon Willebrand(フォン・ヴィレブランド)因子(von Willebrand factor:vWF)である.また,血小板が凝集する際の糊的な成分がフィブリノゲンである.von Willebrand病(von Willebrand disease:vWD)は,vWFが欠損しているために血小板粘着障害をきたし,鼻出血などの粘膜出血がみられる.

 血小板(リン脂質)を反応の場として,多数の凝固因子が集結し凝固活性化が進行する.最終的にはトロンビンが産生され,トロンビンがフィブリノゲンをフィブリンに転換すると凝固が完結して止血に寄与する.

 血栓症は,凝固活性化の契機は止血とは異なるが,血小板や凝固因子が重要な役割を演じているという点で,止血機序

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