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【2】細胞表面マーカー解析
cell surface marker analysis
米山 彰子
(虎の門病院・中央検査部部長)

 造血器腫瘍の診断や経過観察にあたって,細胞表面や細胞質の抗原解析は必須である.

▼基礎知識

 解析にはフローサイトメーターと,抗原に反応させる蛍光標識モノクローナル抗体を用いる.

‍ モノクローナル抗体は国際ワークショップでclusterとして整理分類され,統一的CD(cluster of differentiation)番号がつけられている.CD番号は対応する抗原についても用いられる.

 フローサイトメーターは,蛍光染色した細胞などの粒子を細い流路に流し,それにレーザー光をあて,放射される散乱光や蛍光を細胞単位で測定する装置である.散乱光のうち,励起光の進入方向とほぼ同じ方向に放射される前方散乱光(forward scatter:FSC)の強さは細胞の大きさを反映し,直角方向に放射される側方散乱光(side scatter:SSC)の強さは細胞内部構造を反映する.FSC-SSCあるいはSSC-CD45(白血球共通抗原)など2つのパラメーターを個々の細胞について2次元表示したサイトグラム上で,リンパ球,芽球などを同定することができる(図8-53).このサイトグラム上で解析対象の細胞集団を指定(gating)し,蛍光強度からその細胞の抗原を解析する.SSC-CD45によるgatingは,芽球はリンパ球に比べCD45の発現が低いこと,赤芽球を解析対象から除外できることから造血器腫瘍の解析に広く用いられる.異なった蛍光色素で標識した抗体を組み合わせて用いれば,複数の抗原を同時に解析することができる(図8-54).細胞に膜透過処理を行って抗体を細胞内に到達させることにより,細胞質抗原の解析も可能である.

▼造血器腫瘍の抗原解析

 血球はその系列と分化段階により発現する抗原が異なる.造血器腫瘍はそのもとになった細胞の形質をある程度保持しているので,腫瘍細胞の系統を判断することができる.しか

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