診療支援
治療

2 高ナトリウム血症
hypernatremia
小松 康宏
(群馬大学大学院教授・医療の質・安全学)

学びのポイント

●大多数はNaバランスの異常ではなく水分バランスの異常である.

●高ナトリウム血症が持続するのは幼児,意識障害,体動が困難な場合,口渇中枢の障害があるときである.

▼定義

 血清ナトリウム(Na)濃度が145mEq/Lを超えた状態を高Na血症という.

▼病態

 体内の総陽イオン量に比較して体内自由水(電解質を含まない水分)量が減少した状態である.自由水の過剰な喪失が原因であることが多いが,まれに過剰なNa負荷(高張食塩液や高張炭酸水素Na液)でも生じる.自由水が喪失する原因には,尿崩症,下痢など消化管からの喪失,高温環境下での発汗などがある.正常では血漿Na濃度,血漿浸透圧が上昇すると口渇中枢が刺激され水分摂取が増加するとともに,ADH分泌が亢進し尿が濃縮され自由水の排泄が制限される.高Na血症が持続するのは幼児,意識障害,体動が困難な場合,口渇中枢の障害があるときである.飲水行動が可能ならば,一日尿量が10L以上の尿崩症患者でも高Na血症が進行することはまれである.

▼疫学

 低Na血症と比較し,入院患者での発症率は低く,0.5~2%である.

▼診断

 血漿Na濃度と血漿浸透圧が高値であれば高Na血症と診断される.体液量,尿量,尿浸透圧などから原因を鑑別する(図9-16)

▼症状

 軽度ならば強い口渇感,易刺激性,悪心・嘔吐などがみられる.高度ならば意識障害,昏睡,けいれんなどが出現することもある.急性高Na血症で脳細胞が急速に縮小すると脳出血やくも膜下出血を生じることもある.

▼治療

 自由水喪失を止めること(原因疾患の治療)と水分不足量を補正することが治療の基本である.補正は血漿Na濃度の変化をモニターしながら緩徐に行う.水分不足量は以下の式で予測できる.

●自由水欠乏量=〔(血漿Na濃度-140)/140〕×体水分量

  =〔(血漿Na濃度-140)/140〕×体重×0.5(L

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