診療支援
治療

1 高カルシウム血症
hypercalcemia
濱野 高行
(名古屋市立大学大学院教授・腎臓内科学)

疾患を疑うポイント

●不穏,うつ,認知障害,口渇,多飲,多尿,腎結石,骨痛,悪心,嘔吐,食思不振,消化性潰瘍,不整脈,赤目,角膜石灰化などの症状があるとき.

学びのポイント

●高Ca血症の原因特定が重要であり,副甲状腺機能亢進症,癌などでは今後の治療方針が変わる.

●高Ca血症では,脱水によってAKIをきたすことが多いが,治療反応性である.

▼定義

 血清イオン化カルシウム(Ca)濃度の異常高値.日常臨床では,イオン化Ca濃度を計測することはまれなので,補正Ca濃度でイオン化Ca濃度を推測する.

●補正Ca(mg/dL)=実測Ca(mg/dL)+〔4-Alb濃度(g/dL)〕(ただし,Alb<4.0のときにだけこの式を用いる)

▼病態

 血清イオン化Ca濃度は厳密に副甲状腺,骨,腸管,腎臓によって管理されている.しかし,なんらかの原因で高Ca血症になると,ADHの作用不全による尿濃縮障害が生じ多尿となる.その結果,ほとんどの高Ca血症では脱水を伴う.この脱水あるいはそれに伴う急性腎障害(acute kidney injury:AKI)により,腎臓でのCa排泄が障害される.この悪循環により病態が完成される.

▼疫学

 外来患者では原発性副甲状腺機能亢進症,薬剤性が多い.また入院患者の高Ca血症は癌によるものと長期臥床による不動症が多い.

▼診断

 血清Ca濃度の測定.

▼分類(鑑別診断)

 尿中Ca排泄量の評価で鑑別診断をする(図9-20).FECa(Ca排泄率)が1%以上であれば高Ca血症に対して腎臓は正常に反応しており,腸管(Ca吸収の増大)か骨(骨吸収の増大)の問題である.FECaが低下していれば,腎臓からのCa排泄低下(サイアザイドの副作用か家族性低Ca尿症など)が原因である.

 腸管からのCa吸収増大をもたらすのは1,25(OH)2Dであり,これが高ければ結核やサルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患

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