疾患を疑うポイント
●不穏,うつ,認知障害,口渇,多飲,多尿,腎結石,骨痛,悪心,嘔吐,食思不振,消化性潰瘍,不整脈,赤目,角膜石灰化などの症状があるとき.
学びのポイント
●高Ca血症の原因特定が重要であり,副甲状腺機能亢進症,癌などでは今後の治療方針が変わる.
●高Ca血症では,脱水によってAKIをきたすことが多いが,治療反応性である.
▼定義
血清イオン化カルシウム(Ca)濃度の異常高値.日常臨床では,イオン化Ca濃度を計測することはまれなので,補正Ca濃度でイオン化Ca濃度を推測する.
●補正Ca(mg/dL)=実測Ca(mg/dL)+〔4-Alb濃度(g/dL)〕(ただし,Alb<4.0のときにだけこの式を用いる)
▼病態
血清イオン化Ca濃度は厳密に副甲状腺,骨,腸管,腎臓によって管理されている.しかし,なんらかの原因で高Ca血症になると,ADHの作用不全による尿濃縮障害が生じ多尿となる.その結果,ほとんどの高Ca血症では脱水を伴う.この脱水あるいはそれに伴う急性腎障害(acute kidney injury:AKI)により,腎臓でのCa排泄が障害される.この悪循環により病態が完成される.
▼疫学
外来患者では原発性副甲状腺機能亢進症,薬剤性が多い.また入院患者の高Ca血症は癌によるものと長期臥床による不動症が多い.
▼診断
血清Ca濃度の測定.
▼分類(鑑別診断)
尿中Ca排泄量の評価で鑑別診断をする(図9-20図).FECa(Ca排泄率)が1%以上であれば高Ca血症に対して腎臓は正常に反応しており,腸管(Ca吸収の増大)か骨(骨吸収の増大)の問題である.FECaが低下していれば,腎臓からのCa排泄低下(サイアザイドの副作用か家族性低Ca尿症など)が原因である.
腸管からのCa吸収増大をもたらすのは1,25(OH)2Dであり,これが高ければ結核やサルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/生理食塩液《生理食塩液》
- ジェネラリストのための内科診断リファレンス/3 高カルシウム血症・低カルシウム血症
- 今日の治療指針2023年版/高P血症,低P血症
- 臨床検査データブック 2023-2024/カルシウム〔Ca〕 [パニ][小][保]* (包)
- 今日の治療指針2023年版/副甲状腺機能低下症
- 新臨床内科学 第10版/3 悪性腫瘍随伴高カルシウム血症
- 新臨床内科学 第10版/2 低カルシウム血症
- 新臨床内科学 第10版/1 原発性副甲状腺機能亢進症
- 新臨床内科学 第10版/6 低マグネシウム血症
- 新臨床内科学 第10版/1 副甲状腺機能亢進症に伴う神経障害
- 今日の診断指針 第8版/尿細管性アシドーシス