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治療

4 低リン血症
hypophosphatemia
駒場 大峰
(東海大学准教授・腎内分泌代謝内科学)

▼定義

 血清リン濃度が2.5mg/dLを下回った場合に低リン血症と診断する.

▼病態

 低リン血症の背景には,腸管でのリン吸収低下細胞外から細胞内へのシフト腎からのリン排泄亢進のいずれかが存在する.

▼診断

‍ 表9-12に低リン血症の原因を示す.FEpが5%を下回る場合は,尿細管でのリン再吸収は亢進していると考えられ,腸管でのリン吸収低下,細胞外から細胞内へのシフトのいずれかが低リン血症の原因である可能性が高い.

 近年,尿中リン排泄の亢進による低リン血症の多くに線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)が関与していることが明らかとなった.腫瘍性骨軟化症では,FGF23産生腫瘍の存在が低リン血症の原因となる.遺伝性低リン血症性くる病では,骨細胞におけるFGF23産生が種々の原因により亢進する.静注鉄剤はFGF23産生を刺激し,低リン血症をきたすことがまれにある.腎移植後には低リン血症がしばしば認められるが,この病態にもFGF23上昇が関与していることが示されている.

▼症状

 リンは骨の構成成分であり,慢性の低リン血症では骨石灰化が障害され骨軟化症をきたす.細胞内では,リンは細胞膜のリン脂質やATPなどの高エネルギーリン酸化合物を構成しており,このため高度の低リン血症では,筋肉系(横紋筋融解症),血液系(溶血,白血球遊走能の低下),中枢神経系(意識障害)にさまざまな障害をもたらす.

▼治療

 血清リン濃度2mg/dL以上の場合は,治療の必要はない.血清リン濃度2mg/dL未満の場合は,経口リン製剤による補充を行う.乳製品もリンの補充に有用である.活性型ビタミンD製剤の併用により腸管でのリン吸収促進が期待できる.血清リン濃度1mg/dL以下や症候性の場合は,点滴での補正を行う.

トピックス

【抗FGF23抗体】

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