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治療

6 低マグネシウム血症
hypomagnesemia
坂口 悠介
(大阪大学大学院・腎疾患臓器連関制御学)

学びのポイント

●低Mg血症がほかの電解質異常(低カリウム血症,低カルシウム血症)の原因・増悪因子になることがある.

●PPIによる低Mg血症は時として致死的であり,注意を要する.

▼定義

 血中マグネシウム(Mg)濃度が基準範囲(1.8~2.4mg/dL)を下回った状態を低Mg血症と定義する.

▼病態

 低Mg血症の病態は,①摂取不足,②腸管吸収障害,③尿中排泄亢進,に分類される.

 通常の食生活で高度なMg欠乏を生じることはまれだが,中心静脈栄養時にはMg投与不足による低Mg血症に注意が必要である.

 Mgは主に空腸・回腸,一部は大腸で吸収され,腸管切除後には低Mg血症をきたす.アルコール多飲,炎症性腸疾患,慢性下痢,吸収不良症候群などでも低Mg血症をきたす.PPIの長期服用(2年以上)による低Mg血症は腸管吸収障害が原因と考えられており,同薬剤の中止によりすみやかに改善する.ヒスタミンH2受容体拮抗薬による低Mg血症の報告はない.

 低Mg血症の存在にもかかわらず尿中Mg排泄が24mg/日以上または尿中Mg排泄分画が2.7%以上の場合,尿中排泄亢進と考える.主な原因は,種々の薬剤(ループ・サイアザイド利尿薬,カルシニューリン阻害薬,シスプラチン,アミノグリコシド),糖尿病,尿細管間質障害,Gitelman(ギテルマン)症候群,3型Bartter(バーター)症候群,その他の遺伝性疾患である.

 高度の低Mg血症(通常,1.5mg/dL以下)は副甲状腺ホルモン分泌抑制と末梢組織での同ホルモン作用不全を生じ,重度の低カルシウム血症の原因となる.一方,軽度の低Mg血症ではMgによる副甲状腺カルシウム感受性受容体刺激の低下により副甲状腺ホルモンが上昇することもある.

 Mg欠乏はヘンレループ上行脚のカリウムチャネル,ROMKでのカリウム排泄を促進し,低カリウム血症を助長する.

▼治療

 原因薬剤が存在す

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