▼血液透析の概念
血液透析(hemodialysis:HD)は,バスキュラーアクセスから血液を取り出して,図9-27図に示すようなダイアライザという医療器具に透析液とともに流し,溶質の除去,過剰な体液の除去を行う治療法である.ダイアライザの中には,通常1万~2万本の中空糸が入っていて,中空糸の中を血液が,外側を透析液が流れている.血液は200~300mL/分,透析液は500mL/分程度の流量で流れる.中空糸の壁には,分子量2万~3万までの物質は通すが,アルブミンはほとんど通さない程度の大きさの孔が存在し,溶質・水はこの孔を通って移動する.
▼拡散と限外ろ過
ダイアライザでは,図9-28図に示すように,拡散とろ過の技術を用いて,物質・水が除去される.
拡散は,血漿濃度と透析液の濃度との差によって,物質が受動的に移動するものである.このため,表9-22図に示すように,腎不全で上昇しやすい物質は,透析液中の濃度が低く設定されるか,透析液に含まれておらず,腎不全で低下する,カルシウム・重炭酸イオン濃度については,正常からやや高値に設定されている.
ろ過は,中空糸の血液側に相対的な陽圧,透析液側に相対的な陰圧をかけ,その圧力の差によって中空糸壁を通って,水溶液が移動するものである.圧力の差(膜間圧力差)に応じて,ろ過される水溶液の量が変化する.
拡散とろ過の決定的な違いは分子量による物質除去の特性である.図9-29図に示すように,拡散では,小さな分子量の物質の除去効率は高いが,大分子量物質の除去効率は低い.一方,ろ過では,分子量によらずほぼ一定の除去が行われる.
▼血液透析ろ過
ろ過の技術を積極的に利用し,β2ミクログロブリンなどの比較的分子量の大きい物質の除去効率を高める治療が血液透析ろ過(hemodiafiltration:HDF)である.除水のために必要なろ過よりも,余分にろ過を行