診療支援
治療

3 腹膜透析
peritoneal dialysis(PD)
石橋 由孝
(日本赤十字社医療センター・腎臓内科部長)

学びのポイント

●生体膜である腹膜を用いて,腎不全のために蓄積した過剰体液や溶質の除去を行うもの.

●日本では,血液透析が圧倒的に多く,腹膜透析の普及率は3%程度と低い.

●腹膜透析液の生体適合性の改良や残存腎機能消失例に対する血液透析併用療法により予後が改善する可能性がある.

▼原理

 腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)では,生体膜(半透膜)である腹膜を用いて,浸透と拡散の原理で腎不全のために蓄積した過剰体液や溶質の除去を行う(図9-31)

▼疫学

 日本では,腎不全治療技術が進歩し医療保険制度が整備された結果,すべての末期腎不全患者に透析療法〔PDと血液透析(hemodialysis:HD)〕,および腎移植を提供できる医療体制が確立した.現在日本でのPDの普及率は3~4%程度と少ない.HDが先に発展・普及した歴史や初期のPDにみられた硬化性腹膜炎という合併症が知られ,1990年代半ばに患者数が頭打ちとなった.2001年より,腹膜透析液の改良や残存腎機能消失例に対するHDとの併用療法が保険適用となり,予後が改善すると想定され,今後の普及が期待される.

▼末期腎不全治療におけるPDの位置づけ

‍ 図9-32に腎不全ライフの全体像を示す.残存腎機能を有するときには血液透析に匹敵する予後となるが,消失後はその利点がなくなるため,血液透析または併用療法への移行が必要となる.

 腎代替療法の開始時期に,ライフスタイル変化が少なく,かつ残存腎機能への影響が少ないPDで開始する方法をPD firstという.HDからPDに移行する場合もあるが,残存腎機能が消失していることが多いため週1のHDを併用とする.週5~7日のPDと週1回のHDを併用すると,患者のライフスタイルを変更することなく,適切な溶質除去と体液管理の達成が可能となる.

▼分類

接続方式

①手動方式:完全な無菌操作を必要と

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