診療支援
治療

4 心血管異常
cardiovascular disease
常喜 信彦
(東邦大学医療センター大橋病院・腎臓内科教授)

疾患を疑うポイント

●同じ心血管疾患でも健常人とは異なった発症病態をとることが多い.

●各心血管疾患の典型的な症状がないことが多い.

●検査の異常所見により偶然発見されることが珍しくない.

学びのポイント

●維持透析患者の死因の40%が心血管疾患による.うっ血性心不全,致死性不整脈による心臓突然死が特に高率で心筋梗塞,脳血管疾患,末梢動脈疾患も合併する.

●腎臓病では動脈硬化が促進的に進行する.特にMönckeberg(メンケベルグ)型中膜石灰化は維持透析患者の特徴的変化であり,すべての心血管疾患の発症に深くかかわっている.

うっ血性心不全

 維持透析患者の死因の約25%は心不全死である.虚血性心筋症,弁膜症性心筋症,高血圧性心筋症といった左室収縮能,拡張能障害をきたす心筋症が潜在し,体液過剰が容易に起こりうることにより,うっ血性心不全を発症しやすい.維持血液透析は1週間に3日行う不規則な治療法であり,透析間隔が長くなるときに高率に発症する.減塩食の徹底,体重の過剰増加を予防することが最も大切である.心筋保護を目的として,レニン-アンジオテンシン系阻害薬やβ遮断薬も積極的に投与されるようになってきている.

心筋梗塞

 心筋梗塞を含む虚血性心筋症が,維持透析患者に最も多く潜在する心筋障害である.一般的に心筋梗塞の典型的症状は胸痛や胸部絞扼感とされるが,維持透析患者では呼吸困難感や咳嗽といった呼吸器症状が多い.心筋梗塞は発症病態により,粥腫崩壊に伴う血栓形成といった一次的要因と,冠動脈狭窄とは独立して二次的な要因により心筋酸素需給バランスが破綻して発症するタイプに分けることができる.維持透析患者では後者の病態が多いと考えられている.体液過剰(容量負荷),高血圧(圧負荷),貧血,透析中の血圧低下といった末期腎臓病特有の背景が需給バランス破綻につながりやすい背景と考えられている.治療は健常人に対す

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