診療支援
治療

1 腎移植の適応と実際
西 慎一
(神戸大学大学院教授・腎臓内科)

▼定義・分類

先行的腎移植(preemptive kidney transplantation:PEKT)

 一度も透析療法を受けずに腎移植を受ける形式を先行的腎移植とよぶ.しかし,例えば数週間程度の短期間,透析療法を受けてから腎移植を受ける形態もPEKTとする考え方もある.したがって,PEKTとnon-PEKTに明確な定義はない.日本の場合,PEKTにおいてはドナーはほぼ親族に限定されており,PEKTはほぼ生体腎移植と考えてよい.ドナーが豊富な海外では,死亡した非親族ドナーからPEKTを受ける場合もある.

非先行的腎移植(non-PEKT)

 一般的には,長期の維持透析患者が腎移植を受ける形式である.ドナーが親族である生体腎移植とドナーが死亡した非親族である献腎移植の2つの形式に分かれる.

▼疫学

 わが国では,2010年代後半,毎年1,600~1,700人ほどの症例が腎移植を受けている.2016年度の日本移植学会の調査では,新規の腎移植患者は全体で1,648人で,1,471人が生体腎移植,116人が脳死下献腎移植,61人が心停止下献腎移植であった.生体腎移植(n=1,331)の患者のみをさらに分析すると,透析を一度も経ずして移植を受けた症例は220人(16.5%),移植直前のみ透析を受けた症例は148人(11.1%)であり,およそ30%の症例が先行的腎移植の形式で腎移植を受けていることになる.

トピックス

【近年の腎移植の傾向】

●夫婦間腎移植

 夫婦間腎移植が近年増加している.免疫抑制薬の進歩で拒絶反応が少なくなり,HLAタイピングが合わない夫婦間でも安全に移植が受けられる.

●先行的腎移植

 先行的腎移植が増加している.わが国の移植施設では,30~50%が先行的腎移植となっている.

●ABO不適合者間腎移植

 生体腎移植が多い日本では,海外よりもABO不適合者間腎移植の比率が高い.近年,血

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