診療支援
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3 レシピエントの術前評価
西 慎一
(神戸大学大学院教授・腎臓内科)

腎移植患者の術前評価

 レシピエントは,慢性腎臓病を有しているが,その他の点で移植手術に耐えられる,さらに移植後の免疫抑制療法を受けることができる身体条件を有していることが求められる.これらの点を確認するために術前評価が実施される.表9-25に術前評価項目をまとめた.

 拒絶反応を予想するため,ドナーHLAとの交差反応性を確認することが必要である.方法としては,リンパ球クロスマッチ検査,フローサイトメトリー,フローPRA法などが用いられる.ドナーHLAに対する抗体をレシピエントが移植前から有している場合は,移植前に抗ドナーHLA抗体の除去療法を行う必要がある.また,血液型不適合者間腎移植となる組み合わせでは,移植前にレシピエント血中に存在する抗A抗体,抗B抗体などの血液型抗原に対する抗体除去療法が必要となる.具体的には,血漿交換と術前免疫抑制療法により血中抗体価の低下をはかる.

‍ 感染症は移植後最も警戒しなければならない移植後合併症である.移植前にサイトメガロウイルス,EBウイルス,単純ヘルペスウイルス,帯状疱疹ウイルス,水痘ウイルス,麻疹ウイルス,流行性耳下腺炎ウイルス,風疹ウイルス,アデノウイルスなどの抗体価を確認しておく.特に,水痘,麻疹,流行性耳下腺炎,風疹の4種のウイルス抗体価が低い場合は,事前にワクチン接種を行う.これら4種のワクチンは生ワクチンであり移植後の免疫抑制下では追加接種はできない.

 肝炎,梅毒,結核などの活動性感染症がないことも確認が必要である.レシピエントがC型慢性肝炎抗体陽性,HCV-mRNA陽性症例である場合でも従来は,そのまま腎移植を施行することもあった.しかし,近年のC型慢性肝炎治療薬である直接作用型抗ウイルス薬(direct activating agent:DAA)を用いると,タイプⅠ型のC型肝炎では,治療によりウイルス除去ができる症例

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