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5 ドナーの術前評価と長期フォロー
西 慎一
(神戸大学大学院教授・腎臓内科)

生体腎移植ドナー術前検査

 基本的には,レシピエントとほぼ同じ検査を行う〔本章「レシピエントの術前評価」の項の表9-25参照〕.術前検査では,腎機能の評価が基本的に重要である.糸球体ろ過量をまず評価する.推算糸球体ろ過量のみでなく,クレアチニンクリアランスイヌリンクリアランスなど複数の方法で腎機能を評価する.腹部エコー,造影腹部CT,腎シンチグラフィなどにて,腎形態や分腎機能検査を行う.腎機能の左右差が認められる場合は,機能低下している側を提供腎として選択する.また,腎血管造影を施行し,腎動脈あるいは腎静脈の走行を確認する検査も必須である.通常は,手術時に長く腎静脈が確保できる左腎を提供腎とするが,腎動脈あるいは腎静脈が複数に分岐している症例では血管修復手術が必要となる.その分岐状態によっては,右腎の選択をする場合もある.

 ドナーに関しても,レシピエントと同居あるいは接触する可能性がドナーは高いことから,ウイルス感染抗体価は確認し低ければ予防接種を受けてもらう.サイトメガロウイルス,アデノウイルスの抗体価は必ず検査する.近年,生活環境の改善からサイトメガロウイルス抗体価の上昇していない人が増加している.ドナーがサイトメガロウイルス抗体価陽性,レシピエントがサイトメガロウイルス抗体価陰性のD+R-の組み合わせは,レシピエントは腎移植後にサイトメガロウイルス抗原が陽性となりやすく,ガンシクロビルの予防内服を長期的に行う必要がある.

 また,レシピエントと同じく,C型肝炎抗体陽性,HCV-mRNA陽性症例の場合は,DAAによる治療を受け,SVRとなってからドナーとなることが求められている.

ドナーの長期フォロー

 ドナーは健康体であるといっても,年齢を重ねると生活習慣病の悪化あるいは新規罹患が起こりうる.生活習慣病の発症あるいは悪化がないか,定期的な医療機関での診察が望ましい.

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