診療支援
治療

【1】腎代替療法の選択と準備
花房 規男
(東京女子医科大学准教授・血液浄化療法科)

 腎機能が高度に低下すると,体内の水の成分に溶けている物質(溶質)と水との量と質を適正にコントロールするという,体液の恒常性が維持できなくなる.この場合,腎臓の機能を肩代わりする,腎代替療法が必要となる.

 腎代替療法には,大きく透析療法と,腎移植がある.腎移植では,腎臓の機能をほぼ正常まで肩代わりすることが可能であるが,透析治療では,最低限しか補助ができない.このため,透析療法を行っていても,腎不全の合併症を予防することはできない.

 現在,治療を受けている患者は全国で30万人を超えており,依然増加傾向にある.原疾患では,糖尿病が,新規導入患者,全患者とも最も多い.高齢化も顕著であり,全患者では平均67歳,導入患者に至っては平均69歳に達する.長期透析歴をもつ患者も多く,8%が20年以上の透析歴をもち,最も長い透析歴をもつ患者は45年を超えて透析を受けている.

 透析治療には,大きく血液透析腹膜透析とが存在するが,ほとんどの患者が血液透析を受けていて,腹膜透析を受けている患者は約3%に過ぎず,患者数は大きな変化はない.

 いずれの治療においても,実際の治療を介する前に準備が必要であり,あらかじめ腎臓専門医の受診を行うことが必要とされる(早期紹介,early referral).具体的には,透析導入が見込まれる半年から1年前から腎臓専門医の受診が望ましいとされている.血液透析では,こうした準備として,バスキュラーアクセスの作成が行われる.腹膜透析では,あらかじめ腹膜透析カテーテルを挿入しておくことによって,導入時の入院期間の短縮がはかられる.また,腎移植の場合にも,透析療法を行わずに移植を受ける先行的腎移植(pre-emptive kidney transplantation:PEKT)が広く行われるようになってきていて,ドナーを含めた検査が行われる.

 実際の腎代替療法の導入時期

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