▼定義
急速進行性糸球体腎炎症候群(RPGN)は,血尿,蛋白尿,円柱尿などの糸球体腎炎を示す尿所見を伴い,放置すると数週から数か月で急速に腎機能が低下し末期腎不全に至る臨床症候群である.病理学的には壊死性半月体形成性糸球体腎炎を呈することが多い.
▼病態
RPGNの病理学的な特徴である壊死性半月体は次のような機序で生じる.後述の病型分類に記載した種々の病因により,糸球体毛細血管内で激しい炎症が惹起され,糸球体毛細血管壁やメサンギウムに壊死性病変が生じる.糸球体毛細血管壁は断裂し,Bowman(ボーマン)腔内にフィブリンなどの血漿成分が析出する.そこに単球・マクロファージが浸潤,増殖し,さらにBowman囊上皮細胞も増殖し,半月体が形成される.半月体は細胞性半月体,線維細胞性半月体,線維性半月体と経時的に変化する.
▼疫学
RPGNは比較的まれな疾患であるが,近年わが国では増加している.新規にRPGNと診断された患者は,2014年には年間2,200~2,400人と推定されている.
▼分類
➊RPGNの分類
RPGNは原疾患により,腎臓のみ障害される一次性RPGN(特発性半月体形成性糸球体腎炎,IgA腎症など)と全身性疾患に伴い腎臓も障害される二次性RPGN(ループス腎炎,ANCA関連腎炎など)に分類される.
➋壊死性半月体形成性糸球体腎炎の病型分類
壊死性半月体形成性糸球体腎炎は,糸球体の蛍光抗体法による免疫グロブリン(主としてIgG)の沈着様式により表9-29図のように3型に分類する.
線状型は抗糸球体基底膜(GBM)抗体腎炎で認め,顆粒状型はループス腎炎,IgA血管炎,膜性増殖性糸球体腎炎など免疫複合体が糸球体に沈着する腎炎で認められる.微量免疫型はRPGNで最も頻度の高い病型で,ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎,多発血管炎性肉芽腫症,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,腎限局型血
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