診療支援
治療

(2)悪性腎硬化症
malignant nephrosclerosis
長田 太助
(自治医科大学教授・腎臓内科学)

▼定義

 高度の高血圧のために腎臓の細小動脈に壊死などの強い病変が生じ,レニン分泌が亢進して高血圧がさらに進行して,腎硬化が悪化していく病態のことをいう.悪性高血圧症とほぼ同義である.

▼病態

 血圧の急激な上昇による細小動脈の血管内皮障害を契機に,壊死性細動脈炎,増殖性動脈内膜炎,壊死性糸球体腎炎が生じ,進行性の腎機能障害が生じる(図9-46).そのため相対的に虚血状態になり,レニン-アンジオテンシン(RA)系が亢進し,さらに血圧が上昇して,悪循環に陥る.腎臓以外でも,脳・心臓・大血管などの標的臓器の障害が急速に進行する.眼底では網膜出血,滲出性病変,乳頭浮腫を認める.

▼診断

 血圧値は,Ⅲ度高血圧(収縮期圧≧180mmHgかつ/または拡張期圧≧100mmHgの高血圧)に該当することが多い.重度の高血圧と,眼底所見,臓器合併症など,臨床所見により診断する.その際,腎生検は必須ではない.腎臓機能は急速に低下することが多く,蛋白尿が合併するが,顕微鏡的血尿を認めることもある.

 血管内皮が障害されることによる血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)をきたし,LDH・ビリルビンの上昇,貧血,血小板減少,破砕赤血球,ハプトグロビン低下などの所見を認めることがあるので注意が必要である.

▼治療

 悪性高血圧は高血圧緊急症であり,集中治療室に準じる環境下での治療が望ましい.厳密かつ確実な血圧コントロールが必要になるため,経静脈的降圧薬を用いる.臓器障害の程度に応じて治療速度を決定する.急激な降圧治療を行うと臓器障害が助長される可能性があることに留意する.このため,最初の1時間では平均血圧で25%以内の低下にとどめるようにし,また,血小板減少を伴う場合にはTMAの合併に留意する.特に非典型的溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremi

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