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治療

4 全身性強皮症に伴う腎病変
renal lesions in systemic sclerosis
廣村 桂樹
(群馬大学大学院教授・腎臓・リウマチ内科学)

▼定義

 全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)は皮膚や内臓の硬化をきたす疾患である〔第13章「全身性硬化症(強皮症)」の項()も参照〕.SScに伴う腎病変では,強皮症腎クリーゼ(scleroderma renal crisis:SRC)が代表的である.頻度は少ないがANCA関連腎炎がみられることがある.

▼病態

 SRCはSScによる血管障害を基盤として,加速型-悪性高血圧を伴いながら,急速に腎機能が低下する病態である.腎臓の弓状動脈,小葉間動脈,輸入細動脈が主に障害され,粘液様(ムチン)物質の沈着を伴う内膜浮腫や血管壁のフィブリノイド壊死を生じる.フィブリン血栓による血管閉塞もみられる.これらの動脈の血管内腔狭窄により糸球体血流は低下し,傍糸球体装置でのレニン産生が亢進し,レニン-アンジオテンシン系が活性化する.これにより全身血圧が上昇し,血管障害がさらに悪化するという悪循環に至る.

 進行すると小葉間動脈などで平滑筋や線維芽細胞が増殖し内弾性板が多層化したonion skin lesionがみられる.また高度の血管内腔狭窄により破砕赤血球が生じ,溶血性貧血,血小板減少を伴い,血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)の病態を呈する.

 SRCでは通常高血圧を伴うが,数パーセントに高血圧を伴わずに腎機能低下をきたす患者が存在し,正常血圧SRCとよぶ.TMAの病態をとることが多い.

 ANCA関連腎炎では,SScの経過中にミエロペルオキシダーゼ抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)が陽性となり,壊死性半月体形成性腎炎を発症する.肺出血,多発性単神経炎,紫斑などANCA関連血管炎の全身病変を伴うこともある.

▼疫学

 わが国ではSRCはSSc患者の3~5%程度にみられる.海外の報告では発症リスク因子として,①抗RNAポリメラーゼ

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