診療支援
治療

【1】多発性囊胞腎
polycystic kidney disease
関根 章成
(虎の門病院・腎センター内科)
乳原 善文
(虎の門病院・腎センター内科)

学びのポイント

●最も頻度の高い遺伝性囊胞性腎疾患がADPKD.

●主に成人で発症し,両側腎臓に多発性の囊胞が発生・増大し腎機能が徐々に低下する.

●腎機能が保たれている時期に進行を抑制する治療薬として,近年トルバプタンが使用されるようになった.

●透析開始後では,両側腎動脈塞栓術にて腎容積を縮小させる治療が行われることがある.

▼定義・分類

 腎臓に大小の囊胞ができた状態を囊胞性腎疾患と総称し,遺伝性と非遺伝性に分類される.

 遺伝性囊胞性腎疾患には,常染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD),常染色体劣性多発性囊胞腎(autosomal recessive PKD:ARPKD),ネフロン癆(nephronophthisis:NPHP),常染色体優性尿細管間質性腎疾患(autosomal dominant tubulointerstitial kidney disease:ADTKD),多発奇形を伴う囊胞性腎疾患〔Bardet-Biedl(バルデ-ビードル)症候群(BBS),Joubert(ジュベール)症候群(JBTS),Meckel-Gruber(メッケル-グルーバー)症候群(MKS),口・顔・指症候群Ⅰ型(oral-facial-digital syndrome type I:OFD1)など〕,腫瘍性囊胞性腎疾患〔結節性硬化症,von Hippel-Lindau(フォン・ヒッペル-リンドウ)病〕が含まれる.

 非遺伝性囊胞性腎疾患には,発生異常による多囊胞性異形成腎と髄質海綿腎,後天性囊胞性腎疾患,単純性腎囊胞,多房性腎囊胞などが含まれる.

 遺伝性囊胞性腎疾患で最も頻度の高い疾患が,ADPKDである.常染色体優性遺伝形式を示し,男女ともに発症する.遺伝性疾患であるが家族歴が確認できない症例も少なく

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