疾患を疑うポイント
●胎児期や新生児・乳児期の腹部超音波検査により指摘される.
●小児で尿路感染症を診断した際には,その背景にある病態として検索すべきである.
●複数の先天異常を有する症候群では,先天性腎尿路異常についても検討する.
●成人期,特に30歳前後までの末期腎不全の原疾患としても重要.
学びのポイント
●腎実質と尿路は発生過程で関連しており,腎尿路の先天異常を総称して先天性腎尿路異常(CAKUT)とよぶ.
●小児期末期腎不全の40%,小児期の保存期腎不全の60%を占める.
▼定義
腎臓の形態異常と尿路の形態異常は併存することも多く,発生過程での関連性も強いため,それらを一連の病態として総称する先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT,「カクート」とよばれる)という用語が広く用いられる.明確な定義はないが,腎尿路の発生異常に基づく形態異常を指す.
▼病態
ヒトでは胎生5週に中腎管〔Wolff(ウォルフ)管〕から萌出した尿管芽が後腎間葉内に侵入し,尿管芽と後腎間葉との相互分化誘導が始まる.その結果,成熟した腎実質とそれに続く尿路(腎杯,腎盂,尿管,膀胱,尿道)が形成される.尿管芽萌出の位置に異常があると膀胱の尿管開口部の位置異常(これに伴って膀胱尿管逆流などが生じる)に結びつくだけでなく,尿管芽と後腎間葉との相互作用にも支障をきたし,腎実質の形態形成にも異常をきたすと説明される(尿管芽仮説).
CAKUTの原因には腎発生に関与する遺伝子の異常のみならず,環境要因も想定される.CAKUT症例で遺伝子異常が判明するのは10%前後といわれる.環境要因には母体糖尿病,薬剤への胎児期曝露(エタノール,レニン・アンジオテンシン系阻害薬など),母体低栄養,胎内感染などがある.またDNA塩基配列の異常によらな