▼定義
1962年に初めて報告された常染色体劣性の遺伝性疾患.新生児~乳幼児期に発症し,低カリウム血症と代謝性アルカローシスを特徴とする.
▼病態
Bartter症候群の責任遺伝子としてNa+-K+-2Cl-輸送体(NKCC2)の異常が同定され,その後Kチャネル(ROMK),Clチャネル(ClC-Kb),Clチャネルβサブユニット(Barttin)の遺伝子異常が次々と明らかにされた(表9-51図).これらはいずれも腎臓ヘンレ係蹄の太い上行脚(thick ascending limb:TAL)において食塩の再吸収にかかわる分子であり,Bartter症候群はTALにおける食塩再吸収の低下が病態の中心と考えられる.TALに存在するCa感知受容体(CaSR)の機能活性型変異もBartter症候群の原因となることが報告されている(Bartter症候群5型).
TALで再吸収される食塩の量は尿細管全体での再吸収量の30%程度を占めており,NKCC2の機能が障害されると,集合管に到達する食塩の量が増加する.集合管ではNa+再吸収に伴ってそれと交換するかたちでK+やH+が排泄され,低カリウム血症と代謝性アルカローシスを呈することとなる.また体液量減少傾向となるためレニン・アンジオテンシン系が亢進し,低カリウム血症と代謝性アルカローシスが助長される.腎組織では傍糸球体装置の過形成が認められる.
発症時期は病型によっても異なるが,典型的には新生児~乳幼児期で,多飲多尿,脱水,成長障害,腎石灰化などが認められ,検査所見では低カリウム血症,代謝性アルカローシス,高レニン・高アルドステロン血症が特徴である.
▼診断
低カリウム血症,代謝性アルカローシス,高レニン・高アルドステロン血症が新生児や乳幼児に認められればBartter症候群が疑われる.先天性クロール下痢症やほかの先天性腎尿細管疾患,あるいはル