診療支援
治療

1 急性腎盂腎炎,慢性腎盂腎炎
acute pyelonephritis,chronic pyelonephritis
荒川 創一
(三田市民病院・院長)

疾患を疑うポイント

●発熱,側腹部痛があり,正しい採尿法(中間尿またはカテーテル採尿)で膿尿・細菌尿が認められる.

●女性に多く,膀胱炎症状(排尿終末時痛,頻尿など)が先行あるいは併存することがある.

学びのポイント(分類を含めて)

●細菌性感染は呼吸器と尿路とが二大領域であるが,原因菌が容易に同定されるのは尿路感染であり,尿路感染症は膀胱炎と腎盂腎炎とに大別される.

●先天性の膀胱尿管逆流症(vesicoureteral reflux:VUR)を有する小児で反復性の急性腎盂腎炎を繰り返すことがある.

▼定義

 細菌感染症として,主に内因性に腸管内に常在する細菌が逆行性(上行性)に外尿道口から尿路に侵入し,膀胱に炎症状態をきたすと一過性に膀胱尿管逆流が起きやすく,腎盂に到達した細菌が増殖して腎盂腎炎を惹起する.

▼病態

‍ 急性腎盂腎炎では細菌が腎盂からさらに腎実質内に侵入し炎症を惹起し,高熱と側腹部痛をきたす.約30%は菌血症を併発しているとされる.

‍ 慢性腎盂腎炎は,腎の細菌感染症が持続し,発熱や側腹部痛などの症状はないか弱いが,抗菌薬療法によっても根本除菌されず,炎症のため次第に腎機能が低下し,やがては血液透析療法を余儀なくされることもある病態をいう.

 以下の記述は,臨床的に早急な対応が求められる急性腎盂腎炎(単純性,複雑性のいずれをも含む)に集約して進める.

▼疫学

 細菌感染症である急性腎盂腎炎は女性に多い.解剖学的に尿道長は女性で約4cm,男性で約20cmと差があり,かつ女性の外尿道口は腟前庭に開口するため,腸内細菌の膀胱への侵入頻度は圧倒的に女性が高いことによる.

▼分類

 急性腎盂腎炎は,単純性(基礎疾患がない)と複雑性(尿路基礎疾患,糖尿病などの易感染因子を背景とするもの)とに分かれる.

▼診断

腎盂腎炎症状の確認

 膀胱炎症状が先行あるいは併存することがあり,発熱・側腹部痛(時に悪心

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