疾患を疑うポイント
●乳幼児,学童,成人女性の再発性腎盂腎炎.
●胎児や乳児の超音波検査で認められる腎上部尿路拡張.
●神経因性膀胱患者で認められる腎上部尿路拡張.
学びのポイント
●原発性と続発性に分類される.
●小児期の原発性VURは自然改善ないし治癒する傾向がある.
●UTIを惹起するリスクとなる.腎盂腎炎が重症の場合あるいは繰り返される場合,後天性の腎実質障害(腎瘢痕)が発生する.
●先天性腎尿路異常(congenital anomaly of kidney and urinary tract:CAKUT)の代表的疾患であり,高度VURは先天性の腎実質障害(異形成腎)を伴うことがまれでない.
●先天性や後天性の腎実質障害は,将来の腎機能障害や高血圧のリスクとなる.
▼定義
膀胱に一度貯留した尿が上部尿路に逆流を起こす現象がVURである.原因となる基礎疾患を有するものを続発性,明らかな基礎疾患がないものを原発性とよぶ.
▼病態
膀胱尿管接合部に本来備わる逆流防止機構は,膀胱壁内尿管の十分な長さの粘膜下トンネルに大きく支えられているが,先天的にこれが短い場合にVURが生じる(原発性VUR).また,排尿時や蓄尿時の膀胱内圧が高い場合にもVURが生じやすい.神経因性膀胱や後部尿道弁などの基礎疾患があると,膀胱内は慢性的に高圧化しVURが生じやすい(続発性VUR).
無菌尿の逆流による圧負荷だけで後天的に腎機能障害が進行することはない.逆流によって細菌が腎臓にアクセスできるようになると容易に尿路感染症(urinary tract infection:UTI)が発症し(腎盂腎炎),それに対する抗菌薬治療が不十分であると腎瘢痕が生じやすい.VURに伴う腎実質病変には,このような腎瘢痕(後天性)以外に,先天性の異形成腎があり,男児乳児の高度VURには異形成腎を認める頻度が高い.
一方,VURがあってもそ