診療支援
治療

4 神経因性膀胱
neurogenic bladder
梶原 充
(県立広島病院・泌尿器科主任部長)

▼定義

 下部尿路機能に関与した中枢あるいは末梢神経の障害により生じる下部尿路機能障害や下部尿路症状を呈する病態.

▼病態

 蓄尿障害,排尿障害がそれぞれ単独あるいは複合で発生し,さまざまな下部尿路症状を呈する.また,尿路感染症や上部尿路障害(水腎症や膀胱尿管逆流,腎機能障害)を引き起こすことも多く,いちど障害された神経の完全な回復は困難なことが多い.

▼分類

 排尿障害と蓄尿障害,両者の混合に分類される.

▼原因疾患

 先天性には,脊髄髄膜瘤,仙骨形成不全,潜在性脊髄閉鎖障害,脳性麻痺などがあり,後天性には脊髄損傷(外傷,脊髄内出血など),脊髄腫瘍,髄膜炎,横断性脊髄炎などがある.また,脳血管障害,神経変性疾患〔Alzheimer(アルツハイマー)病,Parkinson(パーキンソン)病など〕,脱髄疾患(多発性硬化症など),脳腫瘍,神経疾患,糖尿病,認知症,骨盤内手術なども原因となる.

▼診断

 診断では下部尿路症状の評価のみならず,尿路合併症の有無の評価が必要である.

問診

 症状以外に,原因疾患の有無を確認する.

神経診察

 肛門括約筋のトーヌスの評価や肛門反射,球海綿体反射,精巣挙筋反射が有用である.

質問票

 国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score:IPSS)や過活動膀胱症状質問票(Overactive Bladder Symptom Score:OABSS)が,症状評価に簡便で有用である.

尿検査

‍ 血尿を認める場合,泌尿器科の診察が必要である.

腹部超音波検査と残尿評価

 残尿評価は必須で,100mL以上の場合は泌尿器科の診察が必要である.膀胱では膀胱壁の肥厚や肉柱形成,膀胱結石の有無を,腎臓では水腎症や腎結石の有無の評価を行う.

▼治療

治療目標と原則

 治療目標は下部尿路症状の改善と尿路感染症の予防と腎機能の保持であり,簡便,低侵

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