▼定義
尿路のいずれかの部位での閉塞により,尿が停滞した結果生じる病態(腎障害)の総称.
多発性骨髄腫の患者において,大量のBence Jones(ベンス・ジョーンズ)蛋白が円柱を形成し尿細管を閉塞して生じる腎障害(円柱腎症:cast nephropathy)なども閉塞性腎症の1つである.また水腎症は閉塞性腎症の一部分症である.
▼病態
表9-53図に示すような多彩な原因により,尿路閉塞を生じる.
尿路閉塞の初期は,糸球体毛細血管ろ過圧が低下するが,プロスタグランジンE2の産生が亢進するため糸球体輸入細動脈が拡張し,糸球体毛細血管内圧が上昇するため,糸球体ろ過値は変化しない.閉塞が長期化すると,内圧が上昇するため機械的な伸展を生じ,周囲の毛細血管を圧排するようになり,組織の虚血状態を惹起する.組織の虚血は酸化ストレスを増大し,間質への細胞浸潤を惹起し,尿細管の線維化・萎縮を生じる.また虚血はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を活性化し,輸入細動脈を収縮し,虚血のさらなる増悪を導く(図9-59図).
▼疫学
水腎症の発生頻度は3.1%とされ,60歳未満では妊娠や女性生殖器の悪性腫瘍などのため女性が多く,60歳以上では前立腺疾患のため男性が多くなる.またわが国の慢性透析患者の原疾患として閉塞性尿路障害は0.2%とされている.
▼分類
分類は閉塞の時間的経過(急性・慢性),閉塞の程度(部分的・完全),患側(片側・両側),原因(内因性・外因性)などで分類される.
▼診断
早期診断が重要であり,超音波検査による診断が簡便かつ非侵襲である.超音波検査にて疾患が疑われた場合,CT検査を行う.CT検査では尿路周囲の情報も得られ,原因の探求にも役立つ.また残腎機能や分腎機能の評価にはレノグラムや腎シンチグラムが有用である.
なお,尿細管レベルの閉塞の診断は困難であり,現病歴や既往歴の慎重な