診療支援
治療

5 鎮痛薬腎症
analgesic-induced nephropathy
谷口 義典
(高知大学学内講師・内分泌代謝・腎臓内科)
寺田 典生
(高知大学教授・内分泌代謝・腎臓内科)

▼定義

 鎮痛薬合剤またはNSAIDsを大量(例:特定の鎮痛薬を生涯で3kg以上)に長期間服用した場合に生じ,急性腎障害,急性尿細管間質性腎炎,腎乳頭壊死,慢性尿細管間質性腎炎を呈する.時に末期腎不全に進行する.

▼病態

 女性が男性に比し5~7倍と多く,好発年齢は30~50歳である.鎮痛薬合剤としては,アスピリンまたはフェナゾン(アンチピリン)とパラセタモール(アセトアミノフェン),サリチル酸系,カフェイン,コデインリン酸塩の組み合わせがある.NSAIDsとしては,インドメタシン,ケトフェニルブタゾン,メフェナム酸,ナプロキセンが原因となることが多い.

 長期間の鎮痛薬服用により腎皮質が萎縮し,腎臓は縮小する.腎乳頭および髄質の内側に壊死がみられ,その部位には石灰化が認められる.壊死部の周辺には,尿細管の萎縮と拡張,リンパ球主体の細胞浸潤,間質の線維化などの慢性尿細管間質性腎炎像が認められる.また,リポフスチン様色素もみられる.巣状または分節状糸球体硬化と糸球体周囲の線維化が認められる.糸球体外の血管には,硝子化,硬化,筋肉層の肥厚や弾性線維の分裂が認められる.

▼診断

腎症状の確認

 一般的に無症候性である.時に,食塩喪失性腎炎の特徴を有し,初発症状として夜間尿を認めることがある.50%以上に高血圧を伴うが,腎血管狭窄や血栓症との関連が深い.壊死に陥った腎乳頭組織の排出による肉眼的血尿や腎疝痛を伴うことがある.また,鎮痛薬腎症の進行期において,腎盂または尿路の移行上皮癌が,健常者に比し高率に認められる.

腎外症状の確認

 腎外症状としては,胃・十二指腸潰瘍,貧血,高血圧による頭痛,タバコ・鎮痛薬・下剤・利尿薬・アルコールの大量使用による精神神経症状,狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患,妊娠高血圧症候群,皮膚の色素沈着などがみられる.

検尿・血液検査による腎機能障害の確認

 尿検査

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